オーディオブックを先に出版:新たな出版の動き
デジタルファースト――電子版を先に出版するという考え方は今、文章からオーディオへ移りつつある。オーディオブックを先に出版する動きをみてみよう。
わたしたちはこれまで、多くの著者や出版社がこれからはデジタルファーストで出版するというような話をよく耳にした。そうしたケースのほとんどは、電子書籍を先に出版するような意味合いだが、電子版を先に出版するという考え方は今、文章からオーディオへ移りつつある。
最近、Amazonの子会社Audible.comは、W F Howesと著者デビッド・ヒューソン氏との契約をとりまとめ、氏の最新作『Flood』を紙書籍や電子書籍よりも先にオーディオブックで出版する。これは上述した動きを示す一例といえるだろう。
自己啓発書のベストセラー『The 4 Hour Workweek』と『The 4 Hour Body』の著者ティム・フェリス氏もその価値を理解している。フェリス氏の新たな試みであるTim Ferriss Publishingで、同氏は既存書籍のオーディオ版の著作権を取得し、新たなオーディオ版を制作する考えだ。
オーディオブックを先に出版するのは業界を席巻するコンセプトではないが、2年以内により一般化していくだろう。Audibleが提供している個人作家向けオーディオブック制作プラットフォーム「Audiobook Creation Exchange」(ACX)の利用も進むとみられる。そのほか、The Fogland Projectも紙書籍を回避して、まずはオーディオ形式で散文を提供しようとしている。
Amazonは自社のエコシステム内で約50万冊の自主出版電子書籍を抱えるが、Audibleのオーディオブックは10万冊に留まる。これによりオーディオブック市場はかなり容易にインディー著者に食い込める。
それでは、インディー著者が第三者に頼らずに本を自分でナレーションするのにどのような訓練を積めばよいのだろうか。ポッドキャストは小説を続きものとしてオーディオ化する経験を得るのにすぐに人気のある方法になるだろう。適切なハードウェア設定について互いにアドバイスしたりミキサー・サウンドカード・マイクなどの基本的な機材を提供する幾つかの巨大なコミュニティーも存在する。
オーディオブック業界全体は現在16億ドルほどの価値があり、その額はさらに伸びるはずだ。オーディオブックの制作数も、2013年に1万9312タイトル、2012年に1万3255タイトルが制作されており、2009年の4602タイトルから大きく成長している。
オーディオブックの最大手流通プラットフォームはAudibleだ。Audibleは市場に最も浸透しており、2012年の売り上げは33%成長した。これまでに2万6000タイトル以上のオーディオブックを制作しており、1カ月に1000タイトルほどを追加する。Audibleが成功しているのは、読者に多くのオプションを提供する新技術によるものが大きい。
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