セルフパブリッシング。そのコンセプトに賛成したり、反対したり、あるいは幾度となく同じような議論が続いている。
幾度となくぶつかり合い意見。それは、セルフパブリッシング本は質が悪いという意見と、すべての本には出版される権利があるという意見だ。セルフパブリッシングに賛成・反対を表明するこれら2つの意見は、最近のインディーズ作家革命の波以降、そのモデルの支持者や批評家にとってほぼキャッチフレーズになるに至るまで言い尽くされてきた。
先日チャールストンで開催されたPubSmartConのイベントである業界専門家が発言したように、多くの批評家は、従来の出版というのは、ゲートキーパーあるいは『フィルター』としていまだに機能を存続しているとする。そのフィルターがなければ、書籍販売の海域は泥にまみれるのだと。
しかし、何らかの理由で従来の出版領域を去った多くの作者の場合、セルフパブリッシングは既存のファン層に彼らが望む作品を提供するための唯一のルートだ。
著者でありプロ伝記作家のローレンス・グローベル氏は、従来の方法で出版したベストセラータイトルを12冊ほど持つ。その中には、マーロン・ブランド、アル・パチーノ、トルーマン・カポーティ、バーバラ・ストライサンドの公式の伝記も含まれていることを付け加えておこう。
伝記作家、ジャーナリストとしての長いキャリアの間に、グローベル氏は無数のページからなる有名人との会話記録、そして、その過程で自分で撮影した画像を集積していった。しかし、このキャリアについての完全本『You Show Me Yours: A Writer’s Journey from Brooklyn to Hollywood』を長年の出版パートナーに持ち込んだところ、多くの著者が業界で露骨に言われていることを氏も耳にすることになる。
電子書籍を10万部販売したら電話をください、出版しますので
グローベル氏の作品は回顧録といえるが、業界は誰の人生の物語を公開するにも消極的なことで有名であり、それは投資価値がないと判断された(作者の本には情報・会話・彼が著作権を所有する、業界の金鉱と考える向きもある未出版の写真が満載されている事実にもかかわらずだ)。グローベル氏はその本の読者に自身が主体となって販売することを示せれば、出版社は快くそれを引き継ぐだろう。
グローベル氏がセルフパブリッシングに至った理由は、残念ながら特別ではない。街から書店が次々と消え、書籍の発見が困難になり、すでに参入が困難な業界は新タイトルへの投資により慎重な姿勢を見せている。
しかし、この状況は新たな疑問を喚起する。彼がセルフパブリッシングした本は、セルフパブリッシングというステータスゆえに無価値なのだろうか? 著者はベストセラー作家であり、自身のジャンルで尊敬されているベテランではないのか。書店がそうした本を在庫するのを拒否し、(その多くに対してグローベル氏が自身の驚異的なキャリアを通して恐らく多大に貢献してきた)新聞社が本のレビューを拒否するのはなぜなのだろうか。
SmashwordsのCEOであり創業者のマーク·コーカー氏が、“すべての本は読者の前に陳列される機会に値する”という信念を示したインディーズ『作家声明』を掲載したところ、オンラインコミュニティーがすぐに怒りの反応を示した。その信念は出版没落の一部だと批評家はソーシャルメディア上で書き連ねているが、書籍をより台なしにしそうなのは、一定の書籍が出版される必要がないと単一の企業に決めさせることではないだろうか。
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海外では、The New York Times、Amazon、Barnes & Nobleなどのベストセラーリストにセルフパブリッシング作品が数多く並ぶようになってきている。
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