大ベストセラーとなった官能恋愛小説『Fifty Shades of Grey』(E・L・ジェイムズ著)が出版されたのは2011年のこと(映画は2015年のバレンタインデーに封切り予定)。同書が店頭に並んで以来、アダルトコンテンツ出版の自由への扉は大きく開かれたわけだが、批評家たちはいまだに、露骨な内容の氾らんが社会を墜落させると主張している。
面白いことに、女性の作家が書いたアダルトコンテンツを女性の読者が読むことが一般的になってきているという事実を深刻な問題だと思っているのは男性だけのようだ。
エロティカに対する最近の批判には幾つかの奇妙な特徴がある。まず、このテーマは新しいものではない。『Fifty Shades of Grey』のような過激な作品を普通のスーパーで購入できるようになったのは最近のことだが、エロティックな文学は数千年前からその気になればいくらでも入手できた。
また、驚くことに(だからこそ文芸評論家が騒ぎ立てるのだが)、恋愛小説やエロティカの人気のせいで、今や多くの電子書店、あるいはSmashwordsやKoboなどのセルフパブリッシングプラットフォームのベストセラー作家は女性である。E・L・ジェイムズのほか、ベラ・アンドレイ、バーバラ・フリーシー、H・M・ワードをはじめとする多数の女性作家がトップセラー上位を占めている。
官能恋愛小説の作家と愛読者が、もはや欲求不満の専業主婦──つつましい家での退屈な日常からの逃避目的でこうしたコンテンツをむさぼる──というステレオタイプだけではなくなってきていることも批判の混乱を増大させている。
コロンビア大学助教のヒラリー・A・ハレット氏が社会学の学術誌『Pacific Standard』に寄せた論文によると、エロティカの男性読者はかつてないほど増えているという。また、恋愛小説ファンの女性の42%は大卒で、これは米国の女性に占める大卒の割合(30%)より多い。
だが、このジャンルのファンの収益可能性と女性作家の人気にもかかわらず、相変わらずこのジャンルとその読者を否定する男性批評家が圧倒的に多いとハレット氏は指摘する。そして、女性作家とセルフパブリッシング作家の収益可能性が高まる中、このジャンルの人気を理解できず、理解しようともしない男性批評家らがこの現象を否定する方法を探しているのは無理もないことだろう。
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