マンガボックス、新広告導入で売上は上がるか?:eBookマーケットリーダー
600万ダウンロードを突破し、絶好調の電子コミックアプリ「マンガボックス」。最近になってネイティブ広告も導入したが、これによる売上増はあるのだろうか。
前回の流れで、マンガアプリの売上について取り上げよう。しかし残念ながら、マンガアプリ単体での売上を公開しているところは少ない。
珍しく売上規模が分かるのは、「王様ゲーム」などの電子コミックアプリを提供する、株式会社エブリスタだ。これは、DeNAとドコモが立ち上げたジョイントベンチャーとなる。ぱっと見る限り、詳細な決算説明資料は見当たらなかったが、株式会社であるからには、決算公告の義務がある。官報などに出される公告を見れば、ある程度、財務状況を把握可能だ。特にエブリスタの場合、資本金も大きいから「大会社」の扱いとなるのだろう、損益計算書まで開示している。
その規模は、純利益で5億円を超すほど。内訳までは分からないが、さすがの規模感を誇っている。
こうなると気になるのが、同じDeNAグループのマンガ事業である、「マンガボックス」だ。9月17日付で、累計600万ダウンロードを突破。Google Playが選ぶ「2014年 ベストアプリ」の1つに選出されるなど、国内を代表する電子コミックアプリと言える。
しかしマンガボックスの売上は、外からはなかなかうかがい知れない。
広告売上アップで、数字が明かされるか?
マンガボックスは主に、掲載している作品の単行本化でマネタイズしている――と言われている。しかし、具体的な金額は、DeNAの「一事業」として、セグメント売上の中に混ざってしまっている。つまり、主力のソーシャルゲーム事業を含めた「ソーシャルメディア事業」の枠内に、前出のエブリスタなどと一緒に紛れてしまっている状況だ。
当のDeNAも、決算説明の場でマンガボックスの売上にあまり触れていない。直近の2014年度第2四半期の決算説明資料でも、スライド14で「9月に600万ダウンロードを突破し、着実にユーザーベースが拡大」とあるだけで、具体的な利益などには言及していない。
マンガボックスが、まだ赤字覚悟で成長をしている段階なのか、それともセグメント売上の隠れみのの中で、がっぽりともうけているか……、真相は分からないのだが、先日、面白い変化があった。
それは、マンガボックスが新たに広告を導入したということだ。アプリを起動すると、ほぼ「トップページ」といっていい場所に、広告が配信されている。しかも、マンガタイトルの並びに、似たサイズの枠で表示されているわけで、これは昨今よく聞く「ネイティブ広告」(※)の一種と言えるだろう。
マンガボックスのアクティブユーザー数は、AndroidだけでもMAU:80万規模と推測されるので、iOSとの合計では間違いなく100万を超えているだろう。そのユーザーに対し、トップページで広告を打ち込んだということで、数億レベルのインプレッション数も期待できるだろう(この辺りの用語は前回を参照)。いよいよ、マネタイズのフェーズか? と期待もかかる。
これによって大きな売上が上がれば、次回のDeNAの決算発表会で、言及があるかもしれない。業界全体が注目する巨大アプリの、広告導入は、吉と出るのか。よい結果が出るなら、電子コミックの未来は明るい。
著者紹介:杉浦正武
電子コミックアプリ「ハートコミックス」の主担当者。ITmediaで5年間記者を務めた後、MBA留学(南カリフォルニア大学)、A.T.カーニー、DeNAを経てソフトバンクグループに復帰。新規事業であるハートコミックスを牽引する。
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