WebサービスとP2Pでインターネットは新しい時代へ
| 【海外記事】 | 2001.06.06 |
今週,サンフランシスコで行われているJavaデベロッパーのためのJavaOneカンファレンスは3日目を迎えた。基調講演には,サンの共同創設者であるビル・ジョイ氏やCTO(最高技術責任者)を務めるグレイグ・パパドポラス氏らが登場し,Webによって分散コンピューティングが全く新しい世界に入ったとし,デベロッパーらに新しいアプローチを取るように促した。
1984年の設立当初から「The Network is The Computer」を掲げてきたサンの歴史は,そのままネットワークコンピューティングの歴史といっていい。パパドボラスCTOは,ローカルディスクとNFSを利用した共有ディスクの比較を例に挙げ,「データの格納という機能を抜き出し,ネットワーク上で共有することで新しい価値が生まれた」と,分散とそれによる価値について説明した。ちなみにNFSは,サンがまだ初期のころに開発し,業界標準となったファイルの共有システムだ。
1990年代に入ると分散オブジェクト技術が注目され,CORBAなどを利用することで一枚岩のアプリケーションを機能単位で分解し,それらをネットワーク上に分散させる試みが行われた。これをWebの登場は,さらにスケールあるものにしている。
1995年にデビューしたJavaは,元々デジタル情報家電向けに開発が始まったもので,それらのデバイスがネットワーク化されることを前提としていた。日本において爆発的な普及が始まったJava搭載携帯電話の例を見ても分かるとおり,Javaが結びつけるデバイスは,PCを追い越し,桁違いのボリュームになるとみられている。
こうなると,もはやコントロールすることは不可能だ。アプリケーションや管理に対するアプローチも変えていかなければならない。
パパドポラス氏は,「ネットワークのスケールが上がるにつれて,アプリケーションを配信するだけではなく,Web上に分散したサービスをどのように探し,どのように価値あるものに組み上げていくかが課題となる」と話す。
サンではライバルベンダーと同じようにWebサービス構想であるSun ONE(Open Network Environment)を発表している。しかし,CTOを務めるパパドポラス氏は,「これはマーケティング向けのマップだから……」と,Sun ONEに関してはさらりと流してしまうあたりが面白い。
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| 基調講演のビル・ジョイ氏(中)とパパドポラスCTO(左) |
P2Pの基盤,Jxta
無数のネットワーク化されたデバイスが,中央のサーバを介さずに直接やり取りするピアツーピア(P2P)が注目されているが,サンはJxtaプロジェクトを立ち上げ,P2Pのコミュニケーションプロトコルを開発している。
Jxtaプロジェクトを主導するビル・ジョイ氏は,「10年前からさまざまなデバイスが登場するのを予想していた。単機能のデバイスはネットワーク上から必要とする仲間を探し,そのリソースを活用できるようにする必要がある」と話す。
4月下旬にはアパッチのソフトウェアライセンス方式でソースコードを公開しており,デベロッパーコミュニティーによって開発を加速させようとしている。
「25年前のUNIXにならった。このアプローチが新しいエネルギーを生み出している」とジョイ氏は話す。
ナップスターのように共通のサーバや決められた手順で自分が持っているデジタル音楽ファイルを公開すれば問題はないが,そうでなければ仲間を探す手立てはない。Jxtaプロジェクトは,ピアを探して気に入ればグループをつくり,リソースを活用するというコアとなるプロトコルを開発し,P2Pアプリケーション開発の基盤にしてもらうのが狙いだ。企業などで利用してもらうにはセキュリティも不可欠で,Javaのセキュリティ機能が貢献しているという。P2Pデベロッパーたちは,ローレベルを気にせず,Jxtaコアの上にサービスやアプリケーションを開発できるわけだ。
インスタントメッセージング,ファイル交換,あるいはサーバを介さないオークションなどの取引でP2Pアプリケーションの開発が進んでいるが,基調講演のステージでは,イー・ミコロ・ネットワークスの「Demand Driven Access」(DDA)技術がデモされた。同社のP2P技術は,ネットワーク上のコンピュータにキャッシュを置き,コンテントサーバに変えてしまうもの。ユーザーはオリジナルのコンテントサーバまでアクセスにいく必要がなく,パフォーマンスも改善される。そして,何よりもコストは劇的に下がる。
現在,jxta.orgサイトでは,Jxtaのソースコードやバイナリなどがダウンロードできる。サンによれば,既に5万ダウンロードが記録されているという。
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[浅井英二 ,ITmedia]

