重大な岐路に立つiPlanet E-コマース・ソリューションズ
| 【海外記事】 | 2001.06.08 |
サン・マイクロシステムズは,ライバルに追いつくべく,自社のWebサービスの「絶対権力者」としてiPlanet E-コマース・ソリューションズのトップであるマーク・トリバー氏に白羽の矢を立てた。
サンとアメリカオンライン(AOL)のアライアンスであるiPlanet E-コマース・ソリューションズのトリバー社長は,IBMやマイクロソフトらの製品と競合できるWebサービスプラットフォームに関する取り組みの指揮を執ることになる。副社長のダグ・キーワート氏によると,トリバー氏は数週間前からこの役職に就いており,現在はサン社内の技術およびマーケティング幹部によって構成されるチームを管理しているという。
キーワート氏はほかのメンバーの名前は明らかにしなかったが,サンがWebサービス向けとしてデベロッパーやパートナーらにSun ONEアーキテクチャを推進し,トレーニングや認定プログラムをWebサービスでも提供することを明らかにしている。同社では資格のあるシステムインテグレーターを「Authorized Web Services Centers」に指名し,Javaと同じようにWebサービスを伝道したいと考えている。
大きなチャンス
Forteアプリケーション開発ツール,Java,そしてSolarisとともに,iPlanet製品ラインもサンによるSun ONEを構成するものだが,同アーキテクチャは技術的に中立であり,インターネット標準に準拠する製品であれば,コンポーネント単位で組み合わせが可能だ。
「われわれは1月にSun ONEを発表して以来沈黙を守ってきたが,沈黙してきたからといって何もしていなかったわけではない。Webサービスの作り方はよく知られていないので,これは付加価値サービス業界にとって大きなチャンスなのだ。われわれはデベロッパーコミュニティーの成長を促進しなければならない」(キーワート氏)
Webサーバ市場において最も有力なポジションにつけているにもかかわらず,サンはWebサービス市場でライバル(特にIBMやマイクロソフト)に悲惨なほど後れをとっている,というのが大半の意見だ。
マイクロソフトは.Net戦略,そしてIBMはますます人気の高まるWebSphereアプリケーションサーバはじめとするミドルウェア製品ラインと,サンのライバルたちはWebサービスに早くから取り組んできた。IBMとマイクロソフトはどちらも魅力的なWebサービスのビジョンを売り込んできた。
一方,サンは自社のWebサービス戦略の概要をほとんど明らかにしたがらない様子を見せており,売り込みが一段と複雑で難しい「スマートサービス」と呼ばれる概念にフォーカスしてきた。
今回のトリバー氏の動きがiPlanet E-コマース・ソリューションズの将来にとってどのような意味を持つのかは明らかではない。同社のシニア製品マーケティングディレクター,リンダ・ポプキー氏によると,2年前に設立された同アライアンスの契約は2002年の3月に期限が切れるが,両パートナーは現在再交渉を進めているところだという。
Webという武器
同社のiPlanet製品の大部分はサンの中に組み込まれるというのが大多数の予想だ。ポプキー氏によると,iPlanet製品は生き残るが,サンとAOLの提携が継続するかどうかは不透明だという。
いずれにせよ,iPlanet E-コマース・ソリューションズのアライアンスはネットスケープと同社の無数の製品を獲得したばかりのAOLが,これらの製品をスピンオフさせるための手段の1つとして設立した名ばかりのものだった。
市場調査会社のギガ・インフォメーション・グループでディレクターを務めるランディー・ヘッファーマン氏は,「AOLがネットスケープを買収したのはWebに参入することだけが目的だった。われわれは常に,AOLが(これらの製品を)2年以内に売却するのを妨げる何らかの制限などがあったと推測していた」と話す。
その結果,「AOLは(iPlanet E-コマース・ソリューションズに)あまり関与していなかった。実質的にはサンだった」と同氏は話す。
iPlanet E-コマース・ソリューションズは設立当初から,サンが買収したネットダイナミックスのアプリケーションサーバとネットスケープから引き継いだキーバのプラットフォームという2つの技術の統合を試みる中で苦戦を強いられてきた。これがインストレーションの問題や,ホーム・デポやジョンソン・アンド・ジョンソンといったカスタマーの不満へとつながった。
微妙な差
その一方で,BEAシステムズやIBMはアプリサーバビジネスで明確なリードを確立し,両社合わせて市場の3分の2を獲得した。(独立企業としても,サンの子会社としても)iPlanet E-コマース・ソリューションズがBEAやIBMを倒すのは難しいだろう。
さらにiPlanet E-コマース・ソリューションズには,最新バージョンのOracle9i Application ServerがBEAやIBMに勝ると主張するオラクルに追いつく仕事もある。
ハードウェアプラットフォームは,どのJavaアプリサーバベンダーにも対応しているため,サンは極めて正しい行動を取っている。サンのソフトウェア担当執行副社長,パット・スルツ氏は,「サンはJavaと同様の互換性を持っている。何にでも対応するのだ。iPlanet E-コマース・ソリューションズは誇りに思っているが,サンは標準に対して平等に開発を行う」と話す。
もしサンがiPlanet製品を引き継げば,Solarisサーバ版の製品を多く販売しているリーディングベンダー,BEAシステムズとの提携に確実に影響を与える。
サンの市場革新ディレクター,アン・トーマス・マーネス氏によると,サンは BEAとの関係に傷をつけるようなことはしないという。
「われわれの主な売り上げはハードからのものとなっている。BEAはサンのためにハードの売り上げを伸ばしてくれる。われわれはこの関係を危険にさらすようなことは絶対にしない」(マーネス氏)
BEAは依然として明確にサンの行動に依存している。サンが将来的にiPlanet製品をSolarisにバンドルするとのサンの幹部によるコメントが4月に出ると,BEAの株価が急落してしまった。サンはあとからこのような計画があることを否定している。
もしそのようなことをすれば,サンはアプリサーバを自社OSに搭載して出荷するマイクロソフトをお手本にすることになる。そして,オラクルのCEO(最高経営責任者),ラリー・エリソン氏によると,マイクロソフトとその.Net戦略は,Javaに準拠するすべてのアプリサーバベンダーにとって最大の課題だという。
エリソン氏は先週,JavaOneの中で「Javaにとって最大の脅威はパフォーマンスだ。.Netと同じスピードで動作させられるかどうかが課題だ」と話している。
[Deborah Gage & Anne Knowles ,Sm@rt Partner]
