e-Day:ホントのソフトウェア

【国内記事】 2001.06.14

 大塚商会,マイクロソフト,およびアイ・オー・データ機器の3社がリユースPCの寄贈・支援プログラムを発表した。

 環境に対する配慮には,廃棄する量を減らしたり,その資源を再利用するアプローチなどがあるが,最も効率的な方法はリユース(再利用)するものだ。しかし,われらがIT業界はその宿命から,このリユースが難しい。

 CPUは,ムーアの法則に従い,18カ月で2倍という性能向上が続いており,その性能をむさぼるようにソフトウェアは肥大化する。そのため,2年から3年でPCをリプレースするという企業も多いようだ。

 何より,マイクロソフトが製品のバージョン表記を米国の自動車業界と同じように年式に切り替えたことで「陳腐化」にさらに拍車がかかったように思う。Windows 98は実際に十分使えるOSだが,時代遅れのようなイメージを受けてしまう。年式が古いOffice 97はなおさらだ。個人的には,この組み合わせを愛用していて,何ら不満はないのだが……。

 日本電子工業振興協会は3年前,「使用済みコンピュータの回収・処理・リサイクルの状況に関する調査報告書」で警告を発していた。3年前といえば,インターネットの爆発的な普及とWindows 98の登場を控え,PCがコモディティとしてユーザーのすそ野を拡大していたころだ。それによると2001年は約14万トンだった廃棄PCは,2002年になると約20万トンへ急増するとみられている。

 こうした廃棄PCの急増に対処すべく,4月1日から「資源の有効な利用の促進に関する法律」(改正リサイクル法)が施行されている。やはり4月から施行された家電リサイクル法と考え方は同じだ。家庭のPCは対象から外されたものの,企業が使ったPCは,メーカーに回収と再資源化が義務づけられている。

 企業やメーカーがリユースPCに関心を見せているのは,こうした背景があるからだろう。

 6月14日,都内のホテルで行われた記者発表会で,大塚商会の大塚裕司副社長は,「三宅島の災害がきっかけ」と話す。

 同社では,営業マンが客先でデモするために使っているノートブックPCが毎年200台も廃棄されていた。使用期間も2年程度で,今回ボランティア団体などに寄贈されるノートブックPCは,Pentium II/333MHz,64Mバイトメモリ,4GバイトHDDというスペックという。

 うおぉ〜,そのスペックなら欲しい,と正直思うが,それほどリユースPCの寄贈は単純じゃないという。

 何よりも,きっかけになった三宅島の件では,東京都が300台の寄贈を募ったところ1000台を超える中古PCが殺到してしまい,都はお手上げ状態だったという。Pentium IIのノートブックならうれしいが,ぜんぶがそんなスペックじゃなかったに違いない。

 中古PCには,OSやソフトウェアのライセンスという問題もあるし,寄贈後にはサポートというさらに厄介な問題も付いて回る。

 今回,大塚商会らが発表したプロジェクトでは,「イーパーツ」という非営利団体が新たに設立されている。リユースPCを必要としているボランティア団体からの依頼を受け付け,公正な審査を行うほか,彼らへのIT講習も実施するという。

 代表を務める会田和弘氏は,「アインシュタインプロジェクト」の代表でもある。このプロジェクトは,子どもたちに寄贈された中古パソコンを与え,好きなようにバラしては,また組み立てることで,その仕組みを学んでもらうというもの。NetDayのようなイベントを通じ,ネットワークの便利さと同時にその危険性も伝えているという。

「ものだけでなく技術だけでもない,心も」というのが,アインシュタインプロジェクトの狙い。リユースPCの寄贈には,ハードウェアやソフトウェアだけでなく,「ホントのソフトウェア」も必要だ。

[浅井英二 ,ITmedia]