Linux Column:「アプライアンスという考え方」

【国内記事】 2001.06.19

 現在のLinuxマーケットを語る上で欠かせないのが「アプライアンス」だ。直訳すれば「機器」となるのだが,ことがソフトウェアが絡むことなので,残念ながらそれほどその直訳からイメージするようなものではない。

 要するに,ある特定の目的に対して,予めOSからソフトウェアまで一通りのものが準備され,内部的に組み込まれ(組み込み先はハードディスクだったり,あるいは不揮発性ROMなどさまざま……),簡単な設定でその目的を達することが出来る,というわけだ。

 しかし,物事はそれほど簡単ではない。例えばあなたが安売り量販店で大安売りになっている家電製品を買ってきたとしよう。大概,そうやって安くなっているものにはペラペラのマニュアルしかついていない。私もよくそういうものを買っているのだから間違いない。

 当然,製品にも電源ランプがついていればいい方で,果たして通電しているのかどうかを教えてくれるものが何一つないものも珍しくない。コストダウンここに極まれリ,だ。

 それでも動く。どこ製であろうと,初期不良率はともかく動くのだ。

 コンセントに差しさえすれば,スイッチを入れさえすれば動くのだ。世の中には,そういったものが溢れている。

 アプライアンスは,先進であるが故に,脆い。誰でも扱えるものではない。気軽にコンセントに差せば使えるものでもない。IPアドレスの設定から始めて,さまざまな知識が要求される。残念ながら誰にでも扱えるものではない。

 アプライアンスが,今後のITを支える1つのキーワードであることは間違いない。しかしそれが,とりあえずアクセスを捻れば走り出すスクーターになるのか,それとも特殊免許が必要なショベルカーになるのかは,今後の進展次第だろう。

 IPv6のような,スクーター化に役立つような技術がちらほらとは出てきている。それを統合化していくのには,Linuxのような,どうにでも改変できるオープンソースが重要だ。すべての決定権を,唯一の提供会社が握っているようなWindowsには出来ないことだろう。

 少なくとも,Linuxにはそのような可能性が秘められているのだ。

[宮原徹びぎねっと]