「あとはSIのやる気! Linuxビジネスは儲かる!」で盛り上がったパネルディスカッション

【国内記事】 2001.06.20

 日本オラクルは6月20日,同社のLinuxビジネスの取り組みを紹介するイベント「Oracle Linux Summit 2001」を都内ホテルで開催。基調講演後には,アットマーク・アイティの代表取締役,藤村厚夫氏をモデレータ役に,NECソリューションズのマーケティング本部長,九鬼隆一氏,テンアートニの代表取締役社長,角田好志氏,サンブリッジ 代表取締役社長,アレン・マイナー氏,日本オラクルの執行役員,保科実氏の4人がパネラーとして参加するパネルディスカッションが行われた。

終始,和やかな雰囲気で繰り広げられたパネルディスカッション(写真奥より,藤村氏,九鬼氏,角田氏,マイナー氏,保科氏)

「ビジネスプラットフォームとしてのLinuxの可能性は? YES or NO」をテーマに開催されたパネルディスカッションは,モデレータの藤村氏の軽快な司会により,ビジネスをテーマとするイベントでありがちな,いわゆる「お堅い」セッションではなく,終始,和やかな雰囲気でディスカッションが繰り広げられた。

IT革命の効能

 藤村氏はまず,「IT革命の効能は,小さな会社が大きな会社をうち負かすことができることだと思うか?」とパネラーに設問。

 NECソリューションズの九鬼氏が,「IT革命の効能は,業務における無駄をなくすことにある。小さな会社が大きな会社にうち勝つのはITではなくアイデアだ」と話し,サンブリッジのマイナー氏は,「IT革命の効能は,倒す倒されないではなく,利用者(エンドユーザー)の生活がどれだけ楽になるかということ。すべての企業が協力しなければならない」とした。

 盛り上がったのは,テンアートニの角田氏の意見で,「日本では,IT革命はまだ始まってもいない! 小さな会社が大きな会社を倒すのはこれからだ」と息巻いた。

 また,「IT革命の主役は情報システム部だとおもうか?」との藤村氏の問いには,九鬼氏が,「情報システムはインフラに過ぎず,あって“当たり前”のもの。主役になる必要はないという。反対意見としては日本オラクルの保科氏が,「常々,CIO復活論を耳にしており,確かにCIOの必要性を見直す時期だと思う。情報化を推進するためにも情報システム部が主役になるときだ」とした。

 一方,マイナー氏は,「主役はお客さま!」として会場から拍手喝采を受けた。

ブロードバンドで何が変わる?

 次に藤村氏は,「ブロードバンド時代の到来で何が変わるのか?」を問いかけた。

 まず九鬼氏が,「より迅速な要件のシステム化が必要になり,オープンソースであるLinuxが使いやすいインフラを提供してくれることになるだろう」と話せば,マイナー氏が,「ブロードバンドによりすぐに何かが変わると考えるべきではない。短いスパンで物事を考えるのではなく,もっと長いスパンでいま必要なシステムがどうあるべきかを見つめるときだ。そうでなければ,物事の本質を見逃してしまう。日本人は,新しいものを創造するのは苦手だが,いまあるものをよりよくするのは得意なはず。Linuxを,長いスパンでよりよいものにできるのは日本人がもっとも優れているはず」と話す。

 ここでは角田氏が,「ブロードバンドをはじめ,さまざまなキーワードが登場しているが“改革的”なものが多く“革命的”なものが登場しない寂しさがある。いっそ,業務アプリケーションをEJB化し,オープンソースにすべきだ。JavaとXMLではもう燃えない(笑)」として,会場の爆笑を誘った。

Linuxの相手は?

 最後に藤村氏は,「Linuxの敵はWindowsなのか?」との問いかけに,保科氏が「敵は自分自身。Linuxは,安定性は問題ないが,ミッションクリティカルな環境で使うには,拡張性,可用性など,まだ解決すべき問題が多い」とし,また必要なのは「ずばりLinux技術者の数!」と答えた。

 また,マイナー氏は,「Linuxビジネスは,ハイリスクと思われがちだが,たとえそうだとしてもリスクをチャンスと思えるポジティブな気持ちが必要な時期」と言う。さらに九鬼氏は,「日本発のオープンソースをどれだけ世界に向け発表できるかが必要」とし,角田氏は,「いまやLinuxの敵はSolaris。Solaris環境をLinuxに移行したいというユーザーは多い。Windowsとの勝負はとっくについている」と締めくくった。

 今回のディスカッションを総括したのは,テンアートニの角田氏のこの一言だ。

「SIのやる気! ユーザーはとっくにやる気になっている。Linuxビジネスは儲かるということをSIに自覚してほしい」

 久しぶりにもっと時間をかけて聞きたいと思う非常に興味深いパネルディスカッションだった。来場者もきっとパネラーに聞きたいことがたくさん有ったに違いない。

関連リンク

▼日本オラクル

▼NECソリューションズ

▼テンアートニ

▼サンブリッジ

▼アットマーク・アイティ

[山下竜大 ,ITmedia]