「Linux導入拒否の理由は解消される」としたIDCのアナリスト
| 【国内記事】 | 2001.06.20 |
日本オラクルは6月20日,同社のLinuxビジネスの取り組みを紹介するイベント「Oracle Linux Summit 2001」を都内ホテルで開催。午後には,IT専門調査会社IDC Japanのサーバ/ワークステーションリサーチマネジャー,塚本卓郎氏が登場し,「SIAS(Standard Intel Architecture Server)市場動向とLinuxのポジショニング」と題したセッションを開催した。
インターネットの急速な発達によるE-ビジネスの普及により,サーバ市場の機種別の出荷動向は大きく変化したという。これまで,「コンピュータ=メインフレーム」だった時代は遠い昔で,オープンシステム化によりUNIXサーバが市場の牽引役になっていた。さらに現在,インターネットの爆発的な普及により,サーバの中心はSIASに移り変わっているという。
SIAS市場の現状は,インテルが5月29日に64ビットの「Itanium」プロセッサを発表したことにより,エントリークラスからハイエンドまで,幅広い市場に展開可能で,OSもWindowsをはじめ,LinuxやUNIXなどさまざまなプラットフォームが対応される予定であることから,既存のソフトウェア資産を有効に活用しながら高い拡張性が実現できるという。
その中でもLinuxオペレーティングシステムへの期待は高く,その優位性として塚本氏は,「低価格,低リソースで利用でき,オープンソースであることから移植,カスタマイズが容易,さらにインターネットとの高い親和性も確保できる」という。
同社の2000年度におけるLinux市場の現状調査では,Linux利用分野の88%が,Web,メール,DNSなどのWebサービスアプリケーションで利用されているという。また現在,リリースされているアプライアンスサーバの86%でLinuxが採用されている。ただし,SIASでのLinux採用率は7.4%に過ぎないが,昨年から今年にかけて各サーバメーカーが相次いでLinuxプリインストールモデルを発表。その割合は,急激に拡大すると予測されている。
「既に,インターネットサーバとして,エッジ部分でのポジションは確立している」(塚本氏)
一方,Linuxの導入におけるIT企業の動向は,その認知度はほぼ100%であるものの,導入率は50%に止まっているという。Linuxを導入しない理由としては,「業務に適応したソリューションがない」「中・大規模システムに対応できない」「信頼性に疑問」「サポート体制の不備」「技術者不足」などが多いという。
中でも塚本氏が注目するのが,「Linuxは企業内で認知されていない」という理由だ。つまりは,例えば「無償(フリー)のOSなど,あてにならない。Windowsなら安心」など,「まったく根拠のない,非常に日本的な発想による理由だ」と同氏は指摘する。
こうした導入しない理由に対し塚本氏は,日本オラクルをはじめとする業務システムに不可欠なデータベース製品の導入が加速していることや,業務パッケージソフトであるERPやSCM,CRMなどが既にLinuxに移植されていること,各ベンダーが市場拡大を想定したサポート体制の確立を急速に進めていることなどを挙げ,うち消した。
同氏はさらに,Linuxの信頼性に関して,ミラクル・リナックスなどのLinuxディストリビュータが改良,サポートを続けることで懸念は払拭されるとしている。またこうしたベンダーは,Linux技術者の育成や教育ビジネスの展開にも力を入れており,エンジニア不足も解消できると話している。
最後に同氏は,「非常に日本的な理由」と指摘した,企業内での認知に関する否定理由の解消として,次のような見解を述べた。
「Linuxを導入しないのは自由。ただし最後に取り残されるのはだれかをよく考えてほしい」(塚本氏)
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[山下竜大 ,ITmedia]
