Linux Column:Linuxのビジネスモデルとは?(前編)

【国内記事】 2001.07.03

 突然驚きのニュースが飛び込んできた……。

 米国のVA Linux Systemsが,ハードウェア販売を中止し,今後は情報・ソリューション提供ビジネスに集中するというのだ。確かに最近の米国におけるLinuxサーバハードウェア販売状況は,Liunxに力を注いでいるIBMを始めとして,デルコンピュータやコンパックコンピュータなど,これまでWindowsサーバで実績のあるメーカーがLinuxの分野でも売上を伸ばしており,VAが苦戦しているとは聞いていた。

 しかし,随分と思い切った策を取るものだ。VAとしては,ハード販売は一種のアイデンティティだと思っていたからだ。ただハード販売は,粗利の低いビジネスでもあり,Linux市場のみが戦場であるVAにとっては,あまり旨みのあるビジネスとは言えないのも事実だ。今後はこれまで培ってきたブランドイメージと人材でソリューションビジネスに注力していくのは,賢明な判断と言えるのかもしれない。

 さて,前回のこのコラムで,「(日本国内におけるLinux市場に)これまでのビジネスモデルをそのまま持ち込むスタイルでは市場性がない,収益が上がらないとメーカー,ベンダーが食わず嫌いになってしまわないか?」という一抹の不安があることを書いた。殊更,日本の市場においてユーザーにシステムが入っていく際に重要なポイントは「どれぐらい営業マンが売ってくれるか?」という点だ。

 営業マンにとってみれば「モノがどれぐらい売れるか」が重要であって「どんなモノがどれぐらい売れるか」はさして重要ではない。高いモノが売れれば売れるほど成績となるし,利益率の高いものが売れれば売れるほど優秀だと言える。

 この判断がいいとか悪いとかの議論は今回は抜きにしておこう。

 あるいはそうではない,優秀な営業マンも沢山いるのを知っている。それでも,極々一般的な営業マンを測る尺度はこんな感じだろうし,反面全然売れなかったり,売れるたびに赤字を出していたらそれこそ商売上がったりだ。

 営業マンが喜んで売るものは当然「売れるモノ」だ。そして,ここに「売れそうなモノ」と「売れていたモノ」の2つがあるとする。営業マンが売り込むのはどちらか?

 私の考えでは「売れていたモノ」なのだ。なぜなら売り方が大体分かっているので,2個目はより売りやすくなっている。10個ぐらい売れていたとしたらセールストークも滑らかだろうし,100個売れていれば「買わないと遅れますよ」ぐらいは言うだろう。客の立場に立てば同じだ。新製品を好む客もいるだろうが,ほとんどの客は初期不良を掴まされたいとは思っていない。出来れば,10件は前例があれば最高で,出遅れない程度のタイミングで購入するのが最上だと思っているのではないだろうか……。

 また,こんなことも言える。

 車の営業マンが,ある企業に営業車を売り込もうとする。買い手は,よっぽどのことがなければ既に使っている営業車と同じ車種を安く購入したいと思うだろう。なぜか? 違う車種の車がゴチャゴチャとあるのは何かと面倒だからだ。

 コンピュータは車より数倍手間がかかる。車の場合,専門のメカニックを雇うことはほとんどないぐらいメンテナンスフリーになってきているが,コンピュータの場合には一定の規模になれば管理者を雇う必要があるし,管理者はいくつもの種類のOSを管理できるほど暇じゃない。出来れば一種類のOSで管理コストを下げたい,というのが人情だろう。だから,営業マンも基本的に前と同じ種類のOSを勧める。これが現在,最も簡単で,かつ強固な行動性向だろう。

 この先は次回に……。

[宮原徹びぎねっと]