Linux Column:Linuxのデスクトップ分野での可能性

【国内記事】 2001.07.17

 Linuxの今後の方向性というと,現在のサーバ市場でのマーケットシェアの拡大はかなり手堅いものがあり,続いて各種組み込み,ハイエンド分野でのプラットホームなどが並ぶ。

 では,デスクトップは……?

 意外と米国では,Linuxをデスクトップクライアントとして使う傾向が以前から強い。筆者自身,4〜5年ほど前に勤務していた会社の米国本社に打ち合わせに行ったときに,相手の担当者はデスクトップマシンでLinuxを使っていたのを良く覚えている。別に相手は技術者というわけではない。どちらかというと技術からは縁遠い企画担当者だ。

 そういうことができるのも,1つはほとんどのオープンソースのソフトウェアは英語圏ないしヨーロッパ語圏で開発されていることが影響しているといえる。これらのソフトウェアで正しく日本語を表示しようとしても表示出来ないのはご承知の通りだ。

 なにせ日本語は,1文字を表すのに内部的に英語に比べてデータを2倍必要としているので,細かい部分でのデータの取り扱い方法が微妙に変わってくる,表示も文字が大きいため表示エリアからはみ出すことは日常茶飯事だ。

 もちろん,この話はLinuxに限らずWindowsでも同様の問題は起きているのだが,Windowsが商用アプリケーションのジャンルできちんとコストを支払って日本語化を行っているのに対して,オープンソースソフトウェアは残念ながら全てのソフトのおいてそこまでの日本語化を達成できているとは言いがたい。

 アプリケーション個別の問題以外に,プラットホームとしての課題を3つほど挙げておきたい。

 1つはフォント関係の取り扱い。X Windowsでは残念ながら未だにTrueTypeなどのフォントを上手に取り扱い,滑らかに表示する事が出来ないケースが存在する。一時期に比べるとNetscape Navigatorなどで英語と日本語が混在したページでもきちんと文字のサイズを違わずに表示できるようになるなど改善されてきてはいるが,完璧ではない。

 もう1つは日本語入力の問題。圧倒的にMS-IMEのシェアが高く,一部ATOKなどを利用しているような状況でMS-IMEと完全キー互換で日本語が入力できないのは,市場戦略としては致命的だ。後発が優位な相手の上位互換を取るのは当然だからである。

 そして最後は印刷だ。現在のOAは一時期のペーパーレスの掛け声もむなしく,いつまで経っても紙から離れることは出来ない。この分野においては,MacintoshのWYSIWYGが優れていたし,WindowsのGDIもOAレベルではそれなりに使える。Linux(X Window)のそれはLinuxネイティブなプリンタドライバがほとんど無い。MLDPS協議会などの動きもあるが,現時点という意味では絶望的状況だ。

 改善の動きが全くない反面,オープンソース開発モデルはGUIのような純ソフトウェア技術的なものには向かない,という意見もある。個々の興味がバラバラなため,全体としての調和が要求されてくるGUI構築には向かないからだ。それは昔Macのアプリケーション開発のために何冊もガイドラインとToolboxのレファレンスを読まなくてはならなかったことを考えれば肯けるところも多い。

 市場的に見れば,依然としてデスクトップのニーズはあるため,ここをどうしていくのか,今後の動きを注目していこう。

[宮原 徹びぎねっと]