e-Day:普及した携帯電話やPDAをうまく生かせ(後編)

【国内記事】 2001.07.18

 相変わらずうだる暑さが続く東京だが,ビッグサイトの「EXPO COMM WIRELESS JAPAN 2001」には初日を上回る参加者が詰め掛けていた。

 いきなり,エントランスに近いJ-フォンのステージでは,カメラ付き携帯電話を構えたコンパニオンが「写メール」を派手に売り込んでいた。「ビジネスに関係のない方のご入場お断り」の貼り紙があったが,そういうことなのか。ワイヤレス通信技術をいかにビジネスに生かしていくか,そのソリューションを紹介するWIRELESS JAPANなので,このモーバイル端末をいかにビジネスに生かしていくか,それを考えなきゃいけない。

 頭がボッーっとして月並みなことしか浮かばなかったが,J-フォンブースの片隅には,これを脳外科の医療現場で活用する事例を紹介するパンフレットが置かれていた。

 専門医が外出先にいても,CTスキャンしたフィルムやMRI(Magnetic Resonance Image:磁気共鳴画像)のフィルムを写メールで転送し,早期診断・治療に役立てようというものだ。CTやMRIのフィルムから,適切な治療法をアドバイスできる専門医は,かなり特殊な能力が要求されるようで,臓器別に専門化も進んでいるというから,こうした遠隔医療の重要性は今後増していくだろう。

 昨日のこの欄では,モーバイル端末を企業システムに組み込む際に,先ずセキュリティに対する懸念が大きいのを紹介した。ワイヤレス通信事業者では,センターと企業を専用線などで接続する「ワイヤレスイントラネット」を売り込むところもあった( 普及した携帯電話やPDAをうまく生かせ 前編 )。

 しかし,セキュリティ面に配慮しながら,さまざまなワイヤレス技術を組み合わせるとなると企業側の負担は大きい。そこで「MVNO」(Mobile Virtual Network Operater)の出番だ。

 この聞きなれないMVNOだが,携帯端末からASPサービスまで,ワイヤレス通信周りの管理を企業に代わって一手に引き受けてくれる第2種電気通信事業者のことだという。第1種の事業者から回線を借りて再販するため,NTTドコモに限らず,KDDIやJ-フォンといった組み合わせも可能で,それが強みにもなる。国内では最初で唯一の存在という日本通信(JCI)がWIRELESS JAPANに出展していた。

 JCIは1996年5月に設立された独立系のベンチャー企業だ。日本モトローラの移動電話事業部長やアップルコンピュータ(当時)の社長を務めた三田聖二氏が設立時から参画し,現在も社長として同社を率いている。既に1000社(10万回線)の企業顧客を獲得しているという。

 もう7年も前になるだろうか,アップルのデベロッパーズカンファレンスに新社長として登場した三田(さんだ と読む)氏は,参加したデベロッパー全員にNewtonを大盤振る舞いした。何がなんだか分からなかったが,「サンダさんはいい人だ」ということになった。

 ちなみにPDA(Personal Digital Assistant)という名を冠してリリースされた世界で最初の携帯デバイスは,当時スカリーが率いていたアップルのNewtonだった。

 三田氏は,携帯電話やPDAに携わった経験を生かし,次はワイヤレスに特化した企業向けのテレコム管理サービスに取り組んだというわけだ。

 JCIは当初,複数のワイヤレス通信事業者からバラバラに発行される請求書を一本化してくれたり,仕事での利用と個人での利用を分けて請求してくれるといった,いわば音声通信向けのサービスを手始めにビジネスを展開した。どちらかというと企業の総務あるいは経理部門向けのサービスだ。

 しかし,最近では企業向けのビジネスソリューション,「bモバイル」に軸足を移し,セキュアなモーバイルイントラネットを売り込んでいる。企業の情報システム部門に代わって,JCIがハードメーカー,通信事業者,ASP,およびシステムインテグレーターを取りまとめてくれるというものだ。

 JCIのbモバイルでは,ボイスメールや電子メールのスタンダードパックや,ネオジャパンのiOfficeをベースとしたグループウェアパック,アルゴ21が開発した日報作成支援のレポートパックなど,標準的なパッケージが幾つか用意される。

 それぞれ,携帯端末の提供から,セキュアなモーバイルイントラネットの構築,ASP,通信費の一括請求などがワンセットになっていて,もちろん,通信事業者や携帯端末はいろいろと混在させることができる。

 音声通信と同じように公私の利用を区別して請求するサービスもあり,PDAまでがビジネスマン必携のツールとなれば,JCIのようなMVNOへの注目度も高まるに違いない。あらかじめ登録されたURLへのアクセスは仕事とみなされて会社に請求されるが,それ以外のURLは個人宛てに請求書が届くなど,少々いやらしいところもあるが,逆に企業にはウケがいいだろう。

[浅井英二 ,ITmedia]