「eSecurity」と「eProvisioning」に注力するノベル

【国内記事】 2001.07.24

 7月24日,ノベルのプライベートカンファレンス「BrainShare Japan 2001」が,東京・京王プラザホテルにて開催された。一連の講演,カンファレンスで主題となったのは「ディレクトリ」だ。展示コーナーでは,同社の「NDS eDirectory」をベースにした一連の同社プロダクトと,パートナー各社の製品が紹介された。

 現在,多くの企業では,部門ごとにさまざまなシステムが並行して稼働しているのではないだろうか。人事システム,営業支援システム,ERPやCRMなど,数え上げていけば相当の数に上るはずだ。古くからの基幹系システムが企業活動を支える一方で,最近では,グループウェアをはじめとするWebアプリケーションを導入する部門もある。

 ここで問題となるのが,複雑化したシステムの管理方法だ。組織変更や人事異動が発生するたびに,新たにアカウントを作成し,ユーザーに通知するという作業を行う必要がある。逆に,無用となったアカウントは,セキュリティホールとなるため速やかに消去すべきものだが,目の前の作業に追われて取りこぼすこともなくはない。

 こうした作業は,数人,数十人単位ならばまだしも,百人を超えるオーダーとなると,手作業では間に合わない。また,システムごとにばらばらのユーザーIDとパスワードが割り当てられるようだと,エンドユーザー側の負担も大きくなる。複数のパスワードを覚えるのは面倒なため,簡単なもので済ませ,結果としてシステムのセキュリティレベルが低下するケースもある。

 こうした状況を解決する有効な手段としてノベルが提案しているのが,ディレクトリベースのソリューションだ。ユーザー情報とリソース情報をディレクトリ内で一元的に管理し,既存のリソースと連動させることにより,システム管理の手間は大幅に省ける。さらに,アクセス制御などを実現するセキュリティ製品,アプリケーションポータルなどを組み合わせれば,シンプルで,かつ使いやすいシステムが構築できるというわけだ。

「eSecurity」と「eProvisioning」の2分野に注力

 基調講演に立った米ノベルの副社長兼ジェネラルマネージャ,ポール・スマート氏は,ディレクトリをベースとしたシステムによって,企業内の従業員や顧客,サプライヤーなど,あらゆる関係者を安全につなぐという「One Net」構想を強調した。これはこの1年余り,同社が継続して掲げている戦略だ。

 同氏は,OneNetを実現するために,具体的に「eSecurity」と「eProvisioning」という2つの分野に力を注いでいくとした。

基調講演に立ったスマート氏は「ディレクトリが中核」と強調した

 ユーザー認証とアクセスコントロール,SSLによる暗号化機能などをまとめて実現する「Novell iChain」や,名前の通りWebアプリケーションへのシングルサインオン機能を提供する「Novell Single Sign On」,また,バイオメトリクス認証やデジタル証明書などを組み合わせて,柔軟性の高いユーザー認証を実現する「Novell Modular Authentication Service(NMAS)」によって,安全なアクセス環境を提供すると言う。

 もう1つのeProvisioningとなると,これを支える製品が出そろうのはやや先のことになりそうだ。だが,ディレクトリを参照してパーソナライズされたビジネスポータルを提供する「Novell Portal Services」,さまざまなアプリケーションや文書,デジタルコンテンツをWebブラウザから利用できるようにする「Novell OnDemand Services」といったプロダクトが提供される予定だ。

 そして,これら一連の製品をつなぐインフラが,NDS eDirectoryとなる。スマート氏は,「eDirectoryはさまざまなLDAPクライアント/サーバ製品の中でもベストのもの。拡張性やパフォーマンスが高く,非常に多くのインストールベースがある」とし,eDirectoryを改めて「中核」と位置づけた。

「eDirectoryをベースとした一連の製品により,One Net戦略に沿って,より簡単で,安全で,ビジネスを加速するソリューションを提供していく」(スマート氏)

OnDemand Servicesなどの新製品はこの秋登場

 会場の展示コーナーでは,国内での正式なお披露目はまだ先となるNovell OnDemand ServicesやNovell Portal Servicesのデモンストレーションも行われた。

 Novell Portal Servicesは,名前のとおり,個人ごとにカスタマイズされたポータルページを提供するための製品。ディレクトリの内容を参照することで,必要なリソースのみを抜き出して提供できる。シングルサインオン製品との組み合わせによって,アクセス時のセキュリティをいっそう強化することも可能だ。

 また,Novell OnDemand Servicesは,Windows 2000でいう「Terminal Services」を拡張したものといえるだろう。Microsoft ExcelやPowerPointといったアプリケーションをWebブラウザ上から起動できるほか,ストレージ,帯域に関する制御も行える。さらに,ユーザーの利用に応じて課金状況をチェックできる機能も搭載される。

 また,NMASの次期バージョン2.0のデモンストレーションも行われた。従来のバージョンでは,認証の際にノベルが提供する認証局が発行した電子証明書しか利用できなかったが,NMAS 2.0ではRSA,ボルチモア,エントラストなどの電子証明書にも対応する。また,対応するスマートカードの種類も拡大するなど,細かな点で改善が施される。さらに,これまでNetWare上でしか稼働しなかったが,新たにWindows NT/2000に対応することとなった。

 一連の新製品は,今年の8月末から9月にかけてリリースされる予定という。

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[高橋睦美 ,ITmedia]