Linux Column:Webマーケットの勝者は?

【国内記事】 2001.07.31

 私事で恐縮だが,先週は私が代表を務めている「びぎねっと」が絡んだWeb関連のセミナーが立て続けに2つも続いた。

 1つは「Web Developers Conference 2001」と銘打った,データベース,Java,XMLといったテーマを中心に各種Webアプリケーションサーバ製品の紹介や最新技術情報の提供を行ったもの。そしてもう1つは,「PHPカンファレンス2001」という,Webアプリケーション開発用のスクリプト言語「PHP」の最新情報を提供する日本PHPユーザ会主催のセミナーだ。

 それぞれに多くの技術者が集まり,大変有意義な時間を過ごしてもらえたと思う。

 このような状況が出てくるのは,それはいまWebマーケットが「ホット」だからだろう。これまで随分と長い間Webマーケットはホットだったと思うのだが,そのトレンドはそれぞれ変わってきている。

 ざっと思い出しただけでも,「インターネット」という言葉が世の中に出始めてから静的な情報提供手段だったWebが,徐々に社内システムに入り込む「イントラネット」が生まれ,さらにECやB2B,B2Cなどの言葉と共に外に出始めて,最近では,やれ「Webサービス」だの,マイクロソフトの「.NET」だのと大変ダイナミックなシステムインフラとしてのWebに変貌を遂げつつある。

 実際,あまりにもダイナミックかつ広範な領域を持ち始めたため一体何をもって「Webサービス」と言えるのか,正直に言えば私にも分からなかったりする。

 私自身もMOSAICを使って,まだ始まったばかりの商用インターネットサービスに接続して,やれNTTのサイトだの,海外のサイト(どんな内容かはご勘弁を……(笑))だのに接続したりといったファーストインパクトを経てきた1人だ。続いて,会社の顔であるWebサイトのWebマスターをやったり,社外向けのデータベース連動Webシステムを構築したりと,いままでのこのWeb化の流れの中でいろいろなことをやってきた。

 Webの可能性とでも言ったらいいだろうか,その簡易なインターフェースに魅力を感じてきた1人であり,システムの適用範囲が広がっていくのは喜ばしいことだ。

 ただし,好事魔多し……だ。

 現状に問題が多いのも事実ではないだろうか? ざっと見ただけでも,あまりにも関連する技術や製品が多すぎる。ユーザーデベロッパーにしてみれば,果たしてどれを選択するのが,自分が実現したいWebシステムへの近道なのかが分からないといったところだろう。

 2つのセミナーに参加してもらった方々の熱意の裏側に,少しそのような漠然とした不安があるのではないだろうかと考えさせられた。

 実際,現時点で最もトレンドの先端を行くシステムを開発しようとすると,あまりにもたくさんの横文字略称技術を覚えなくてはならない。当然,使用する最新技術が増えていけば,それだけトラブルが起きる可能性が上がってしまうことも避けられない。

 カバーする範囲が広がっていくということは,それだけそのシステムに依存していく範囲が広がっていく,つまりインフラ化するということだ。そういったものは出来るだけシンプルで,かつ安定したものであって欲しい。だが,Web技術の世界はちょっと逆の方向に進んでいる。

 Linuxがマーケットに受け入れられた要因と言うのは,それが飾り気のないシンプルさを持ち,かつ安定していたからだといえる。果たして,これからのWebマーケットを制する技術や製品はどれになるのだろうか。

 Linuxの成功を模倣するものがあってもいいと思うのだが……。

[宮原 徹びぎねっと]