Linux Column:今回の「LinuxWorld SF」は……?

【国内記事】 2001.08.28

 今,サンフランシスコを訪れている。今週開催されている「LinuxWorld San Francisco」に参加するためだ。

 これまで年2回,計5回開催されている同カンファレンスに,実はすべて参加している。これまでの5回のカンファレンスの様子を振り返ることで,それがそのままLinuxの潮流として理解でき興味深い。

 第1回は2年前の3月,サンノゼで開催された。まだまだLinuxの知名度は低いにもかかわらず,シリコンバレーの中心地ということもあり,技術者を中心に非常に大勢の参加者が集まった。リーナス・トーバルズの基調講演は,会場に入りきれなかった人のために隣の部屋にビデオスクリーンが用意されるほどだった。

 第2回はその年の8月。折りしもレッドハットが株式を上場する日と日程がぶつかり,会場ではその話題で持ちきりだった。「Linux meets Business」を象徴するカンファレンスだったといえる。逆に,内容的なものには,それほど記憶がないくらいだ。

 第3回は場所を東海岸は経済の中心地ニューヨークに移し開催された。会場内にネクタイをしめたビジネスマンの姿が目立つ,趣の違う会場風景となった。前回に引き続き,今となっては「バブル」に近かったLinux企業のIPO(株式公開)が話題の中心にあったのは間違いない。

 そういう意味で,第4回は転換期に差し掛かった時期かもしれない。思ったほど,Linuxビジネス(というよりもIPO)がうまくいかないことにみんなが気づき始めたのだ。それは当たり前だ。収益が上がらない企業にいつまでも投資し続けるほど,世の中に資金が潤沢にあるわけではないからだ。

 第5回のニューヨークでは,市場が良くも悪くも沈静化した。それでも出展する企業の数,つまり市場参入してくる企業の数は増えていた。成長している企業,オープンソースコミュニティーから新しく生まれた企業も見受けられた。金融や証券が,必ずしもLinuxビジネスに必要なわけではないのだ。

 そして今回……。

 ここ最近は,あまり芳しい話を聞けない。デスクトップツールを開発していたイーゼルの倒産。VA Linuxのハード部門からの撤退。ターボリナックスとリナックス・ケアの提携の解消など……。

 ターボリナックスは,今回出展していない(少なくともガイドブック上では……。ただ,当日行って見ると出展してる,ということはこちらの展示会ではよくあることだ。印刷に間に合わなかったのかもしれない)。

 まあ,このことがLinuxビジネスの退潮を示しているわけではない。基調講演にはコンパックのCTO(最高技術責任者)自らが,Linuxへの取り組みを明らかにすることになっている。また,それ以外の大手メーカーも大規模な出展を行い,今回開催されるサンフランシスコのモスコーニコンベンションセンターは,これまでのサンノゼコンベンションセンターよりも会場が広くなっている。

 個人的にはサンフランシスコでの開催は,値段の高いダウンタウンのホテルに泊まらざるを得ないので辛いところだが……。

 それはともかく,Linux市場は,徐々にだが高みに登りつつあるような感じだ。しかし登っているのが,これまでの市場プレーヤーとあまり代わり映えがしないというのは少し寂しい気がする。

 これでは,オープンソースにはもう少し世の中の仕組みまでも変えてしまうような期待感があったが,「結局は,Windowsと一緒か?」という失望感を与えてしまわないだろうか? プレーヤーが一緒でも,中身が全然違う。新しいプレーヤーが続々と出てくる,そのような活気ある市場は,2年前の熱気の中だけの幻だったのだろうか?

 これから始まるLinuxWorld SFで,幻ではなく,現実にしてくれる何かを持つ企業が出展していないか,広い会場の隅から隅まで見て回ろうと思う。

[宮原 徹びぎねっと]