日本IBM,パフォーマンスを大きく改善させたWebSphereの新バージョンを発表

【国内記事】 2001.08.29

 日本IBMは8月29日,Webアプリケーションサーバの最新バージョンとなる「WebSphere Application Server Version 4.0」を,9月7日より出荷することを発表した。

 WebSphere Application Serverは,Java 2 Enterprise Edition(J2EE) 1.2に完全準拠したWebアプリケーションサーバ製品。日本IBMでは同製品を,ダイナミックなe-ビジネスを実現するためのプラットフォームと位置付けており,エントリー・開発向けの「アドバンスド・シングルサーバー版」と,本格的なe-ビジネスアプリケーション構築のプラットフォームとなる「アドバンスド版」の2種類を用意した。

パフォーマンスとWebサービスの強力なサポートが特徴

 新バージョンの4.0Jは,Servlet 2.2やJava Server Pages(JSP)1.1,Enterprise JavaBeans(EJB)1.1といったJ2EE 1.2環境に完全準拠している。さらに,J2EEアプリケーションを1つのエンタープライズアプリケーションとして組み立てるJ2EE Application Assembly Tool(AAT)を実装したことで,J2EEアプリケーションの導入をより簡単に,迅速に行えるようになった。

 また,J2EE 1.3の機能の一部にも対応した。J2EE Connector Architectureのサポートにより,SAPやPeopleSoft,J.D.Edwardsといった既存のアプリケーションに対するコネクタが提供される。また,JMS-XAによって,同社のメッセージ指向ミドルウェアである「MQSeries」への2フェーズコミットが可能となった。

 もっとも,BEAシステムズの「WebLogic Server」をはじめ,他のWebアプリケーションサーバ製品のほとんどがJ2EE準拠を謳っているのも事実だ。これら競合製品に対するWebSphereの強みは2つある。1つはパフォーマンスの向上。もう1つは,SOAPの実装によるWebサービスの強力なサポートだ。

DynaCacheによるパフォーマンスの向上について語る大古氏(写真中央)

 WebSphereのパフォーマンスを大きく向上させているのが,新機能である「DynaCache」である。これは,頻繁にアクセスされるServletやJSPの結果をキャッシュすることにより,これらのロードや実行にかかる時間を削減し,劇的にパフォーマンスを改善するものだ。DynCacheを用いれば,キャッシュをオフにしている場合に比べ,数倍から数十倍の高速化が可能になるという。ただしこの実現には,OSにおけるメモリ管理と同じように,キャッシュの無効化方法に工夫が必要となる。同社のOSやトランザクションにおける蓄積がモノを言った機能といえそうだ。

 もう1つの特徴であるWebサービスへの対応は,Webサービスへの接続を行うプロトコルであるSOAPのほか,Webサービスの内容を記述するWSDL,Webサービスを見つけ出すUDDIの実装によって実現された。これにより,B2Bのみならずコラボレーションシステムやポータルシステム,あるいはEAI,EDIなど,さまざまなe-ビジネスアプリケーションを,XMLを通じて容易にWeb上で統合することができる。

 日本IBMのソフトウェア事業部e-ビジネスソフトウェア事業推進部長の大古俊輔氏は,「WebSphereをプラットフォームとしたWebサービスによって,必要なサービスを必要なときに利用できる,いわばインターネットのジャストインタイムを実現する」と話している。

 また,チボリシステムズの「Tivoli SecureWay Policy Director」やLDAPとの連係機能が追加され,Webサービスにログインする際のセキュリティも強化されることになった。今回は大きく取り上げられなかったものの,DB2やLotus Notes Dominoとの連携ももちろん強化されている。

 WebSphere Application Server Version 4.0の価格は,アドバンスド・シングル・サーバー版は112万9500円。アドバンスド版場141万2700円となっている。

開発環境のオープンソース化計画を明らかに

 これとともに,Javaベースのe-ビジネスアプリケーション開発ツールである「WebSphere Studio Version 4.0」もリリースされた。新バージョンでは,SOAPやWDSLといったWebサービス環境に対応したアプリケーションを開発するための機能が追加されている。

 特徴的な機能としては,Web作成ウィザードが挙げられる。これは,CORBAなどで書かれたプログラムをJavaでラッピングし,JavaBeansの形でWebサービスとして実装するまでをサポートするもので,SOAPやWDSL対応のe-ビジネスアプリケーションを容易に開発することができる。

日立ソフトウェアエンジニアリングの中村輝雄氏によって,.NETも含むマイグレーションが可能というデモも行われた

 WebSphere Studio Version 4.0は,9月4日より出荷される。価格は小中規模開発向けのプロフェッショナル版が8万14000円,大規模チーム開発向けのアドバンスド版は27万9300円だ。

 さらに,時期は未定ながら,「WebSphere Studio Workbench」をオープンソース化する計画も明らかにされた。WebSphere Studio Workbenchはさまざまな開発ツールが共通に利用できるサービスやフレームワークの集合体で,これをオープンソース化することにより,幅広く統合開発環境を提供していくという。

「マイクロソフトの.NETも目指すところは同じかもしれない。しかし,.NETがWindowsプラットフォームやC#といった世界を前提としているのに対し,WebSphereはオープンなスタンダード,オープンなJavaをベースとしている。このため,開発したコンポーネントや開発者のスキルを有効に活用できる」(大古氏)

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関連リンク

▼日本IBM

[高橋睦美 ,ITmedia]