LinuxWorld San Franciscoにみる米国Linuxの状況(1)

【国内記事】 2001.09.04

8月28日(1日目):コンパックコンピュータの上級副社長兼CTO(最高技術責任者),シェーン・ロンビンソン氏が講演を行った。プレゼンテーションについては,よくまとまっていたが,それ以上でもないという感じ。逆にその話していることは,別にLinuxでなくてもいいことだという感想を持った。オープニングスピーチなのだから,もう少しLinuxらしさを出して欲しかったところだ。

 しかし,デモンストレーションは少々面白かった。同社のiPAQにワイアレスLANカードとデジタルカメラを接続し,リアルタイムストリーミングを行うというものだ。画質はそれほどでもなかったが,これはハードウェアのせいだろう。

 同社のLinuxにおける他社との差別化という意味では,このiPAQはポイントになるだろう。実際,展示会場内でiPAQをデモに使用しているブースはかなりの数にのぼった。プレゼンテーションでもその辺りにもう少し触れてもよかったのではないだろうか。

 ところが本日,驚いたことにコンパックがヒューレット・パッカード(HP)に買収されてしまった……。IT業界は,ほんとに何が起こるか予測不能だ。

8月29日(2日目):スタンフォード大学のロースクールで教鞭をとるローレンス・レシグ教授が壇上に登場した。現在のオープンソースコミュニティの,特に法律的,ライセンス的な観点からの脆弱性を明らかにした。確かに,オープンソースコミュニティは,例えばGPL(GNU Public License)を金科玉条の如く扱い,ことあるごとに,内部でその解釈について喧喧諤諤と議論している。

 しかし,社会における法律の扱いというのは最終的には交渉の場や法廷で争われるものであり,残念ながら現実においては技術者の法律論が通用することはほとんど無いと言える。同教授の教え子に,いいように捻られて終わりだろう。

 日本ではそれほどではないとはいえ,IT系はただでさえ外資系企業が多いのだから,その影響は少なからず受けるだろう。そろそろ,オープンソースを社会的な観点から分析し,かつその「自由」を守るための活動を強化していくことが必要なのかもしれない。

 そういった意味で同教授の講演は非常に示唆的であり,講演後も拍手が鳴り止まず,質問が続出し,さらに時間が終了しても取り囲む人の輪がなかなか崩れなかった。

8月30日(3日目):レッドハットのCEOであるマシュー・スリック氏が登場。同社の経営戦略について明らかにするのかと思いきや,Linuxの新しい活躍の場として,教育現場にLinuxマシンを,という訴えかけだった。

 同氏の訴えでは,教育現場における「デジタルディバイド」は米国においても深刻になりつつあるようだ。コンピューターが1台もない学校も珍しくないという。そのような場に,「Linuxをインストールしたマシンを提供できないか?」というのが同氏の訴えだ。

 確かに比較的軽快に動くLinuxならば,低価格,あるいは中古のマシンでも動作させることができるし,ライセンス料も無料だ。必要なソフトもフリーソフトウェアで揃えられる。問題の解消にはかなり有利に働くといえるだろう。

 問題は,マシンだ。あるいはそれらを誰が,どのようにサポートしていくかだ。ソフトだけ無料だとしても,それらの管理や運用には確実にコストがかかるし,その問題は教育の場だけでなく,ビジネスの場でも同じだ。

 Linux自身が持つ,1つの大きな課題自体は,どのような場合でも同様のようだ。

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[宮原 徹びぎねっと]