マイクロソフトがロゼッタネット対応のBizTalk Serverを発表,B2Bにさらなる注力

【国内記事】 2001.09.04

 マイクロソフトは9月4日,都内で記者発表会を行い,同社の「.NET Enterprise Servers」の1つで,企業間連携(B2B)と企業内連携(EAI:Enterprise Application Integration)によるサプライチェーンの適正化を実現するBizTalk Server 2000日本語版に,ロゼッタネット標準に対応した機能を追加した新製品を発売すると発表した。新製品は,「Microsoft BizTalk Server Accelerator for RosettaNet Version 1.0日本語版」で,9月7日から販売を開始する。

ロゼッタネット対応のBizTalk Serverを発表する瀬戸口氏

 同社エンタープライズソリューション事業部で本部長を務める瀬戸口靜美氏は,「マイクロソフトはロゼッタネットにボードメンバーとして参加し,普及および啓蒙を図っている。マイクロソフトとして提供する製品がBizTalk Server 2000やBizTalk Server Accelerator for RosettaNet」と売り込んだ。既に,フォードをはじめいくつかの早期導入企業の大規模B2BやEAIシステムで採用されているという。

 また,新製品の説明を行った同社エンタープライズソリューション本部でシニアプロダクトマネジャーを務める深瀬正人氏は,「BizTalk Server 2000の基本機能をベースにロゼッタネットに対応した製品。対応ポイントとしては,PIP(Partner Interface Process)の容易な開発,PIPをやり取りするためのフレームワークである「RNIF 1.1」準拠,基幹系システムとの連携,そしてSOAPやXMLなどの標準への対応などが挙げられる」と話す。

 PIPは,企業間で異なる商取引の手順を,共通化できるプロセスに関して7つのクラスタに分類してテンプレートを提供するもの。クラスタ1の「取引先/製品情報ユーザー管理」「製品情報」「受発注管理」「在庫管理」「マーケティング情報管理」「サービスとサポート」,そしてクラスタ7の「製造管理」という構成になっている。PIPは,RNIFや,取引を円滑にするために用語を統一する「辞書」とともにロゼッタネットの中核的な規約だ。

 PIPとRNIF,辞書の関係は,郵便物をA社からB社に届けるまでを例にすると分かりやすい。A社は,PIPと辞書に則ってビジネス文書を作成し,それを封筒の形状や書式,内容証明を規定するRNIFに基づいて封筒に収める。そして,同じくRNIFが規定する輸送手段(インターネット)を介してB社に届けられるわけだ。

 また,企業内のメインフレームや,ERPなど基幹系システムとの連携が可能になったことも大きな特徴だ。BizTalk Server Accelerator for RosettaNetが受け取った文書は,フォーマット変換などを加えて企業間連携を行うBizTalk Server 2000を介し,メインフレームなら「Host Integration Server」を,ERPなどなら「APP Adapter」を経由して基幹システムへとつながる。これにより,企業内のシステムと取引先システムがシームレスに連携するわけだ。

 例えば,ソニーがある半導体メーカーにプレーステーション用の完成品チップを10万個,7日以内に納入してほしいという無理な要求をしたとする。以前ならば,同社のすべての在庫を合わせても到底間に合わず,取引が不可能であることをソニーに伝え,ビジネス機会を喪失していただろう。

 しかし,B2Bネットワークの構成企業がそれぞれデータベースなどの社内システムをしっかりと構築し,ロゼッタネットを介して取引を自動化した場合,次のような対応方法も考えられる。

 10万個の内,5万個は自社の在庫,2万個はサプライヤー数社の在庫でカバーする。さらに2万個は,取引のある工場が持っている仕掛かり品の中で,配送日数を加えて一週間に間に合う製品を,出来上がり次第直送してもらう。そして,残り1万個は,海外の取引企業に特急モードで配送してもらう。これで,この無理難題も解決するわけだ。

 もちろん,企業間取引には業務プロセスの取り決めがあり,このように都合よくは行かないかもしれない。しかし,取引先とリアルタイムでシステムがつながっているということは,このようなスピード感のある取引形態も不可能ではないといえる。

 BizTalk Server Accelerator for RosettaNetは,プロセッサライセンスでEnterprise EditionとStandard Editionが提供される。Enterprise Editionは,複数プロセッサ,スケールアウト,フェールオーバークラスタリングをサポートし,連携取引先企業,企業内統合アプリケーション数ともに無制限となっており,推定小売価格は142万5400円からとなっている。

 一方,Standard Editionは,1プロセッサのみのサポート,スケールアウトおよびフェールオーバークラスタリングともに不可で,連携取引先が5企業,企業内統合アプリケーション数は5つとなっており,推定小売価格が28万5000円となっている。

 また,ロゼッタネットに関し,川鉄情報システムやコンパックコンピュータ,NEC,日本ユニシス,日立ソフトウェアエンジニアリング,ポータルがパートナーになっているとしている。

ロゼッタネットの可能性は?

 ロゼッタネットは,情報機器や電子部品,半導体などのハイテク企業が参加して,企業間取引の標準を開発し,普及を推進する任意団体。XMLベースで企業間の共通インタフェースを作成することで,ライフサイクルの短いハイテク製品をサプライチェーン内の企業間で素早く流通させ,効率的な在庫管理や生産管理の実現を目指すものだ。

 ロゼッタネットが誕生した背景には,いわゆる“デルモデル”がある。デルコンピュータに脅威を感じたほかのコンピュータメーカーや販売業者が,団結して同社に対抗しようとしたようだ。

 2001年6月の時点でのボードメンバー企業には,IT(PC流通業界)分野でHP,IBM,インテル,マイクロソフト,SAP,さらに現在ではデルも含め27社,EC(電子部品業界)でTIや東芝,サムスン,日立など31社,SM(半導体製造業界)で,アジレント,アプライドマテリアルズ,モトローラ,ルーセントなど30社が名を連ねており,世界のハイテク企業のほとんどがそろってロゼッタネットにコミットしていることが分かる。

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[怒賀新也 ,ITmedia]