Linux Column:Linux10周年!「Linux世界」を考える

【国内記事】 2001.09.18

 9月17日,Linuxは10回目の誕生日を迎えた。

 10年前のその日,Linuxのバージョン0.01がリリースされたのだ。

 果たして今日,各地で催しが開かれたのかどうかは分からないが,10年という節目を迎えたLinuxについて,少し考えてみようと思う。

 おそらく10年前には,現在の状況というのは考えられなかっただろう。よくリーナス(・トーバルズ)がジョークで言っていたのは「いずれは世界を征服」だが,さすがに世界をペンギンで埋め尽くすことは,まだできていない。しかし,オペレーティングシステム市場の一角を占めることはできたと思う。

 世の中を眺めてみれば,Windows 2000は商用UNIXの壁を,相変わらず崩すことができず苦戦しているようにも見えるし,HPはサンの牙城を崩してはいない。今後両社がどのような事業展開をはかっていくのか,注目すべきところだ。個人的には,HPが買収したコンパックの旧DECとタンデムの資産がどうなっていくのかに注目している。

 一方,Linuxにとてつもなく力を入れているIBMは,S/390のような,基幹向けシステムのアプリケーション実行のためのミドルウェアとしてLinuxを推進しようとしている。Linuxを単なる「カーネル」として捉えるのであれば,これも1つの正しい使い方か……?

 同様に,組み込みOSとしての方向も,よりシンプルにカーネルを捉えようとした「モノリシック」か「マイクロ」かの論争を思い出すまでも無く,Linuxらしさであるとは言える。

 こうして見てくるとLinuxは,この10年間,きちんと「Linuxらしさ」というものをふりまきながら成長してきたようだ。ただ,Linuxに関係している人間の全てが10歳の誕生日を両手を上げて祝えるわけでないことが,少しだけ気になる。

 いうまでも無く,Linuxビジネスは現在調整段階だ。ちょうど成長期の子供が関節の痛みを訴えるように,Linuxビジネスもまた痛みを訴えている。あらためて,「Linux世界」をどのように構築していくのか,考えなければいけない節目を迎えているのではないだろうか。

 例えば人間が仕事だけで生きていくだけではなく,趣味を持ったり,社会的な貢献を求められるのと同じく,Linuxもまた,仕事あり,趣味あり,社会的な貢献を考えていく。そんな視点を,この10歳の誕生日を迎えて,Linuxに関わる全ての人が持ってくれたらいいのではないかと考えながら,祝杯をあげたいと思う。

[宮原 徹ITmedia]