Linux Column:電子政府戦略会議とインターネットワームへの対応

【国内記事】 2001.10.02

 先週は,久々にLinuxと格闘していた。

 私自身,ここ最近は技術者としての作業というものをあまりやらなくなっていて,やることといえばせいぜい自分のノートPCをセットアップするぐらいのものだ。ノートPCにOSを再インストールすることは,単にCD-ROMから起動してやればいいだけなので,昔取った杵柄というヤツで,セットアップぐらいわけはない。

 しかし,サーバとしてLinuxをセッティングするとなると,最近では,相当気を付けてセットアップしなければクラックされて踏み台にされて……,と悲惨な目が待っていそうで少々恐い。まぁ,その辺りは,うちの管理者でもある副社長にいろいろと聞きながら勘所をつかんで設定ができるようになったのだが,今度はやれ電子メールを受け取るPOP3の反応が悪いだなんだということで,結局週末まで家でいろいろと試すことになってしまった。

 これは,決してLinuxが楽ではない,ということではない。ただ,あれこれと調べて作業する,ということは時間に余裕がなく,何か単純な一本道でいいからガイドが欲しいと思っている。それなりにいろいろと探してはいるものの,今のところ初めから設定していくときに「まずはこうしましょう」という「流れ」に沿って作業が行えるようなガイドがなくて大変なのだ。結局,幾つかの本を行ったり来たりしながら,いろいろと設定する,という感じになってしまった。

 それでは,Windowsならばどうなのだろう?

 世の中の人は,WindowsはGUIがあって設定も楽なはず,とみているが,実際にはそう簡単ではない。クライアントとしての設定であればともかく,サーバとして使うとなると「コントロールパネル」の中にある「サービス」(サーバの機能をつかさどっているソフトをWindowsではサービスと呼ぶ。Linuxでも各種ソフト(デーモン)をコントロールするコマンドが“service”なのは偶然か?)を見る必要があるわけだが,頭が痛くなりそうなさまざまな名前が並んでいたりする。

 他人ごとながら,「こりゃ,技術者は大変だ」と思う。LinuxもWindowsもどっちもどっちで,結局のところ知らないといけないのは本質的な部分で,要求されるのは経験だ。

 マーケットの動きと言うものだけ見ようとすれば,やれどこそこのメーカーがLinuxに力を入れてるとか,いや,あそこはマイクロソフトと結びつきが強いからどうこう,といった話ばっかりになってくる。しかし,実際の利用状況だけ見ればどっちも大変なものに違いはないのだ。

 しかし最近,このバランスにも変化が訪れつつある。

 この変化は,「インターネットワーム」のためだ。あまりにも猛威を振るっているため,私の知り合いの管理者は何人も「仕事にならない」状態になっている。このような「後ろ向きのコスト」を支払わせられるのは,企業システムにとっては致命的だ。私は幸いIISもOutlook Expressも使っていないので,今のところ被害に遭ってはいないが,そう安心もしていられない。

 マイクロソフトが競合相手に勝ってきた理由のひとつに「FUD(Fear,Uncertainly,Doubt)」があるが,今度はマイクロソフト自身が見えない敵からFUDを突きつけられてしまっている状態だ。そして,これに対する回答がどの程度のものかは,皆さんがご自身で同社のホームページを見て判断してほしい。

 少なくとも,私は「一部のサイトで文字化けなど正しく表示されない場合があります」という但し書きがあるようなWebブラウザはインストールしたくない。

 と,これを確認するためにマイクロソフトのサイトに行ってみたら,昨日までトップページにあった「Nimda」に関する警告へのリンクがなくなっている!

 2回ほどリンクを飛んで探し当てたが,これほど重要な情報を作成後10日で消えてしまうとは。そんなに「電子政府戦略会議」で,ビル・ゲイツが講演することの方が大事なのだろうか?

 少なくとも,こんなに脆弱なテクノロジーの上で運用される電子政府など誰も信用しないと思うのだが,同社にはその程度のバランス感覚もないのだろうか?

[宮原 徹びぎねっと]