NECがベクトル型スパコン「SX-6 シリーズ」発表,スカラー型には負けない

【国内記事】 2001.10.03

 NECは10月3日,都内で記者発表会を行い,商用スーパーコンピュータ「SX-6 シリーズ」を発表した。SX-6 シリーズは,最大8テラFlopsのベクトル型スーパーコンピュータで,従来は約30個のLSIチップで構成していたベクトルプロセッサをワンチップ化することで,価格対性能比と省スペース性を大幅に向上させた。特にゲノム解析や,自動車設計および航空分野の科学技術計算分野で威力を発揮する。同日から販売活動を行い,出荷は12月末から,3年間で国内外含め200台以上の販売を目標としている。

SX-6のマルチノードシステム。1ノードは,1×1.1×1.8メートル

 NECソリューションズで執行役員常務を務める小林一彦氏は,「大容量データを高速計算する分野で,ベクトル型スーパーコンのスカラー型に対する優位は揺るがない」と話す。同氏は,ベクトル型が実行性能でスカラー型を上回ることを,ドイツの気象予報コードや自動車の衝突実験における計算実績データを用いて示した。

 ベクトル型とは,スーパーコンピュータ専用の高速CPUであるベクトルプロセッサを搭載し,一括処理方式で計算を行うもの。一方,近年優位に立ちつつあるのがSGI 2000シリーズをはじめとしたスカラー型だ。これは,汎用的なプロセッサを多数並列接続する方式で,遺伝子解析など多数の業務の同時処理や粒子計算など並列化が容易な計算に適しているという。

 新製品のSX-6シリーズは,64GFlops(8CPU)×128ノード(SX-5までは32台まで),最大で計8テラフロップのベクトル性能で,世界最高レベルの高速処理を実現しているという。これにより,SX-5シリーズに比べて1.6倍の高速処理を実現した。なお,GFlopsは,1秒間に10億回,テラフロップは1秒間に1兆回の浮動小数点演算能力を表す。

 もう1つの大きな特徴は,8ギガFlopsのワンチップベクトルプロセッサの搭載だ。従来は約30個のLSIで構成されていたベクトルプロセッサを,線幅0.15ミクロンのデザインルールを用いた超高速集積CMOS LSI技術を採用したことで,ワンチップに納めた。これにより,価格性能比は約3倍以上,5分の1以下の省スペース性および省電力化を実現している。

 同社は,SX-6シリーズの応用分野として,自動車設計,航空や宇宙,気象および地球環境,原子力,核融合などさまざまなものを挙げている。

変化球のシュミレーション。下2つはフォークボールによる後流の変動の様子

ソフトウェアも充実

 一方,同シリーズを支えるソフトウェアも充実している。OSの「SUPER-UX」(UNIX)は,最大で128ノードのマルチノードシステムをサポートするよう強化され,既存のSX-5 シリーズとの上位互換性も保たれている。

 加えて,SX-6シリーズによる最大で128ノードという大規模なシステム環境を,一元的に運用管理するための「MasterScope」機能や,複数ノードを跨いでバッチのジョブネットを設定し,自動実行できるスケジューラとしての機能も備えている。

 さらに,スーパーコンピュータやUNIXサーバ,パソコンなど異なるデバイスのアプリケーションをGUIベースで操作できる「WebSuperComputing Environment」も提供している。これによって,スーパーコンピュータの計算結果や,画像のデータベース管理などがWebブラウザ上からできるようになり,ユーザーとシステム管理者双方にとって利便性が向上するとしている。

大規模HPC市場を引っ張る

 ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)市場において,SX-6を筆頭に,スカラー型のIA-64サーバ「AzusA」や,IA-64ワークステーションPCクラスタの「Express5800」を含めてファミリーとしてサービス展開していくという。

 また同社は,先端の基板技術やHPC技術の蓄積,グローバルなアライアンス,ユーザーやISVとのコラボレーションを通して,大規模HPC市場のリーダーになりたいとしている。

 同社は,3月に米クレイと結んだ,ベクトル型スーパーコンピュータのOEM供給に関する提携をはじめ,グローバルな販売体制を構築している。

関連リンク

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[怒賀新也 ,ITmedia]