日本IBMとシチズン,Linux搭載の腕時計型コンピュータの試作機を公開

【国内記事】2001.10.11

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)とシチズン時計は10月11日,Linuxを搭載した腕時計型コンピュータ「WatchPad」の開発で協業したことを発表。シチズンと日本IBMの研究開発部門であるIBMリサーチが開発した試作機「WatchPad 1.5」を公開した。

WatchPad 1.5の試作機。左側は,Linuxをリブートしているところで,右側はLinuxのマスコットのペンギンが腕の動きにあわせて踊っている

 WatchPad 1.5は,OSにLinux kernel 2.4を,GUIにMicrowindowsを採用した腕時計型コンピュータ。StrongARMをベースにした32ビットMPU(18〜74MHz)のプロセッサ,8Mバイトのメモリ,16MバイトのFlashメモリ,QVGA(320×240ドット)モノクロLCDを搭載する。バッテリーには,リチウムイオン電池を採用し,充電やアプリケーションの更新は,クレドールを経由して行う。試作機では,フル充電で1〜1.5日の利用が可能という。

 情報の入力は,時計のリューズを応用したリューズスイッチや各種ボタン,タッチパネルを利用した携帯電話の親指入力のような仕組みを実現。スピーカーやマイク,バイブレーション機能なども装備し,将来的には音声に対応した情報の入出力も実現可能という。また,腕の動きを感知し,処理を開始する加速度センサースイッチや,セキュリティ機能に利用する指紋センサーも搭載されている。

WatchPad 1.5では,通信機能を利用して,PCの機能をリモートコントロールできる

 通信機能としては,BluetoothやIrDA,クレドール用のRS232Cなどの標準規格を採用。BluetoothやIrDAにより,WorkPadをはじめとするPDA製品やノートPCなど連携し,スケジュールやメール,携帯電話機能などをリモートコントロールすることもできる。試作機では,WatchPad 1.5を利用してPowerPointをリモートコントロールしたり,Webサイトのリモート管理機能がデモにより紹介された。

 両社は,想定される使用例として,指紋認証機能を利用し,さまざまなデバイスの所有者照合を行う本人認証デバイス,プレゼンテーションのリモコン操作を行うポインティングデバイス,機器に地被くことでイベントを開始するトリガーデバイス,PCのPIMやメールなどを閲覧するビューアデバイスなどを挙げている。

WatchPad 1.5を発表するシチズンの白崎氏と日本IBMの鷲尾氏

 試作機の発表にあたり,シチズンの取締役生産本部長,白崎雄三氏は,「IBMとの協業により時計とコンピュータの融合を実現できるプラットフォームを取得することができた。これにより,いつでも,どこでも,リアルタイムに高度な情報が,高い信頼性のもとに利用できる製品を開発していきたい」と話す。また同氏は,今後さらに時計以外のシステムへの展開を視野に入れていることも明らかにした。

 また,日本IBMの理事 東京基礎研究所長,鷲尾洋一氏は,「時計型のコンピュータは究極のパーベイシブコンピュータだ。当初は,海外の企業との協業も考えたが,時計の開発は日本が最も高い技術を持っており,ぜひ日本の企業と協業したかった。試作機は,既に実用レベルに近いものと考えている」と話している。

 今回,開発された試作機は,シチズンがハードウェア関連部品を,日本IBMが概念設計やアーキテクチャ,ソフトウェアなどを開発。工業デザインは,シチズンが目指すウェアラブルコンピュータと,日本IBMが目指すパーベイシブコンピューティングを具現化することを目的に,両社が協力して担当したという。

関連記事

▼腕時計業界は大丈夫なんだろうか?(News)

関連リンク

▼シチズン

▼日本アイ・ビー・エム

[山下竜大 ,ITmedia]