e-Day:ブロードバンドで楽しもう

【国内記事】2001.10.19

 昨日のこの欄で,アスキーがチャレンジする「ブロードバンド+劇場公開」という複合メディアによる新作映画「シンクロニシティーフェアリーテイル」について書いた。インターネット単独での興業というところまではインフラが整っていないものの,いわゆる「クリック&モルタル」スタイルであれば,事業化できそうなところまできたということだろう。

 オフィシャルサイトでは,監督日記や,いわゆるメイキングを紹介し,メールマガジンや掲示板も用意する。観客同士のコミュニケーションを盛り上げ,少しでも多くの人に劇場に足を運んでもらおうというわけだ。

 また,リアルの劇場では予告編の合間にタバコやショッピングのコマーシャルフィルムが流れたりするが,インターネットではその特性を生かした新しい広告サービスの試みも始まっている。

 今回,アスキーと一緒にシンクロニシティーを制作したソニー系のブロードバンドコンテントサービスプロバイダー,AII(エー・アイ・アイ)は,やはりソニー系のインタービジョンが提供する広告映像配信サービス「PaSaTa」(パサタ)の実験に8月から協力している。

 Personalized advertisement,Sure advertisement,Targeted advertisementをネーミングの由来とするこのサービスは,ストリーミング配信される映像コンテントに,広告クライアント,コンテントホルダー,そして視聴者のプロファイルをベースにマッチングされた広告映像を挿入していくものだ。

 広告クライアントにとってはターゲットを絞り込めるほか,視聴者もそれほど邪魔にならない広告映像を受け入れることで無料,あるいは低料金でコンテントを楽しめるメリットがある。現在,約1000人のモニターを対象に実験を続けているという。

 AIIには,こうした絞込みまではしていないが,「Music Cafe」チャンネルで音楽をダウンロード中に広告を流すことで無料化を図っている。

 話は少し飛ぶが,音楽のためにインターネットを生かそうと取り組んでいるアーティストとして,りんけんバンドがよく知られている。沖縄にこだわり,独特のサウンドを創造している彼らのWebサイトには,沖縄の自然が垣間見えるデジカメ日記もあって,実に楽しい。

 ライブの映像を350kbpsのRealVideoで楽しめるほか,ファンクラブ会員にはニューアルバムの全曲試聴と大盤振る舞いだが,コンサートのチケットをオンラインで販売するなど,ちゃっかりとe-ビジネスしている。Yahoo! Calendarを利用したコンサートスケジュール情報もある。

 そのりんけんバンドが11月初め,東京・お台場のホテルで行われるe-Drive 2001カンファレンスに沖縄のコンサート会場から飛び入りする。

 実を言うと,ひょんなことで主催のキースリーメディア・イベントから,このセッションのモデレーターをやるよう依頼された。シンクロニシティーでは監督から制作総指揮まで何役もこなしたアスキーの奥井宏太朗も「いいですよ,(リーダーの照屋)林賢さん,よく知ってますから」と,二つ返事で参加を快諾してくれた。東京と沖縄を結び,ブロードバンドが何を変えたのかディスカッションしてみたい。

 ブロードバンドのビジネスソリューションを提案する,少しばかり固めのカンファレンスだが,打ち上げを兼ねたスペシャルセッションは楽しくなりそうだ。

[浅井英二,ITmedia]