e-Day:サンはあくまでオープン,反MSでLiberty Allianceを推進

【国内記事】2001.10.30

 サン・マイクロシステムズは10月30日,都内で「Sun ONE Summit」カンファレンスを開催し,「Sun ONE」(Sun Open Net Environment)構想の詳細を明らかにした。1週間前にカリフォルニア州サンタクララのホテルで同様のカンファレンスが行われており,その東京版だ。Sun ONEは,同社が「Services On Demand」と呼ぶ,いわゆるWebサービスを実現するためのソフトウェアプラットフォーム構想で,そのビジョンは今年2月に発表されていたものだ。

 Webサービスは,次世代コンピューティングの本命とみられ,IBM,オラクル,ヒューレット・パッカード,そしてマイクロソフトといった大手ベンダーがさまざまな戦略をぶち上げている。Sun ONEは,それら一連の戦略の最後に登場したもので,一部にはその遅れを指摘する声もあった。

 一方,マイクロソフトはPassport認証サービスやHailstormというコードネームで開発が進められてきた一連の「.Net My Services」を強力に売り込むなど,着々と自社の戦略を推し進めている。

 しかしサンも9月下旬,「自由」の掲げて一気に反撃に出た。インターネット上で個人を認証するためのオープンなソリューションを目指す「Liberty Alliance」プロジェクトの旗揚げだ。

 Sun ONE Summitのために来日したサンのマーク・トリバー執行副社長は,「Passportでは,個人のプロファイルやコミュニティーの情報がマイクロソフトによって保管されることになり,その考え方は根本的に間違っている」と批判する。

 トリバーの言う「コミュニティー」とは,顧客や,サプライヤー,パートナー,従業員,あるいは株主のこと。インターネットを活用することで,より低コストにコミュニケーションを維持でき,さらに新しいサービスを彼らに提供することで,収益を拡大できるという。

 マイクロソフトのPassportでは,常にマイクロソフトを介してでないと,こうしたコミュニティーをつくったり,関係を維持していくことができなくなるのでは,と危惧される。

「Liberty Allianceでは,企業がコミュニティーと1対1の関係を維持できる仕組みづくりを狙っている」とトリバー。

 ユナイテッド航空,ゼネラル・モーターズ,フィデリティインベストメンツなどの一般企業を含む,35社が設立メンバーとして参加し,日本からもNTTドコモとソニーが名を連ねた。トリバーによると,「Liberty Allianceには勢いがあり,既にメンバーは2000社に膨れ上がっている」という。

 Webサービスの典型的な例として,航空チケットの予約がしばしば取り上げられる。予約が完了したあと,「カレンダーをアップデートしますか?」というボタンが現れ,これを押すと自分が普段使っているカレンダーサービスに便名や時間などが追加されるというもの。航空会社のシステムは,顧客がどのカレンダーサービスを利用しているかを知り,そのサービスの認証手続きも代行しなければならない。

 マイクロソフトのPassport認証サービスのように,1社が情報を格納し,どのWebサイトもそれを利用していれば話は簡単なのだが,それでは「独占」や「プライバシー侵害」の懸念がある。企業としても,課金という首根っこを1社に押さえられるのは避けたい。どこかの国のワイヤレス通信事業者のように,極めて強い影響力を持ちかねない。

 そこで,個人認証に関する情報を格納するディレクトリ同士が相互に連携するためのオープンなソリューションが必要というわけだ。トリバーによれば,Javaと同じように自由の旗の下に集結したベンダーや企業らによってLibertyの仕様がまとめられ,その後ベンダーらがLiberty仕様に対応した製品を開発,出荷をしていくことになるという。もちろん,サンでもiPlanet Directory ServerをLiberty対応にするとしている。

 今回のカンファレンスでは,Sun ONEの実現に向けたロードマップも明らかにされ,その第1弾として,Sun ONE Starter KitやiPlanet Portal ServerのInstant Collaboration Packなどが発表されている。

 Sun ONE Starter Kitは,Java開発環境のForte for Java 3.0や,一連のiPlanetサーバ製品から構成され,開発者が今すぐSun ONEベースのWebサービス開発を始められるキットだ。iPlanet製品は,サンとAOLの協業によって生まれたiPlanet E-コマース・ソリューションズで開発が続けられてきたが,Sun ONEでは中核的なソフトウェア製品として位置付けられ,来春までAOLとの契約を残しながらも,既にチームはサンに統合されている。

 国内でもiPlanet E-コマース・ソリューションズのスタッフはサンの社員として雇用され,オフィスも統合されたという。

 なお,Sun ONE Starter Kitは,11月末に横浜で開催されるJavaOne 2001 Japanで参加者に配布される予定。

[浅井英二 ,ITmedia]