e-Drive 2001 Keynote:ラストマイルの広帯域化は順調だが新たな課題も

【国内記事】2001.11.01

 11月1日,東京・お台場のホテルで「e-Drive 2001」カンファレンスが開幕した。昨年始まったe-Driveは,ブロードバンドネットワークのビジネスソリューションや,それを支える最新技術を提案するカンファレンス。運営するキースリーメディア・イベントは,2日間でのべ2万名の来場を見込んでいる。

 エクストリームネットワークスやNEC,F5ネットワークスのネットワーク機器を組み合わせたライブネットワークも構築され,すべての出展ブースにブロードバンドを提供するほか,岡山の美星(びせい)天文台や沖縄のライブハウスとも高速接続する。

 メインとなるセミナーも40セッションを超え,ブロードバンドやワイヤレスLANをテーマに掲げるものを中心に,案内図にペタペタと「満員御礼」の札が貼られた。

 初日の基調講演には,倉敷芸術科学大学の小林和真助教授が登場し,昨年に続き,日本のブロードバンドの現状と将来を話した。

 小林氏は,総務省がまとめる情報通信白書の数字を挙げながら,「インターネット人口は4700万人に達し,企業も95.8%が接続されている」と評価をしながらも,ブロードバンド化で世界をリードする韓国と比べると「いま一歩」と話す。

 確かに都市部を中心にADSLやCATVインターネット,FTTHが急速に普及を始めており,局所的なブロードバンド地帯が現れてきているが,地方との格差という課題が依然として残っている。

 また小林氏は,「キャリアのバックボーンやラストマイルのブロードバンド化は順調に進んでいる一方,ブロードバンドスポット間の相互接続も重要」とし,新たな課題も指摘する。いわゆるピアリングだが,政治的,経済的な問題が絡む。

 しかも,ブロードバンドのサービスレベル合意(SLA)は,ISPの独自基準となっており,異なるISPがあいだに介在するエンドツーエンドのサービスレベルが保証されるわけではない。

 小林氏は,コンテントプロバイダーサイドもシステムのブロードバンド対応を進める必要があると指摘する。

「発信者側のシステムは,700kbpsのストリームを1万ユーザー分配信できるようにしなければならないだろう。これは1年前の10倍。この経済情勢の中でこれだけの投資を行えるところがあるだろうか?」(小林氏)

 大学の助教授らしく,「技術者の養成が課題だ」とも話す。

 とはいえ,小林氏はブロードバンドの将来を悲観しているわけではない。日本テレビのインターネット放送が1日当たり29万アクセスを記録しているほか,グニューテラに代表されるようなコンテントデータベースの共有がブロードバンドのキラーアプリケーションとして普及している。

 初日の夜には800キロ以上離れた岡山の美星天文台からは,未来型アプリケーションの一例としてDV映像をe-Driveの会場に中継するデモも行われる。インターネットの双方向性を生かし,東京から天体望遠鏡を遠隔操作するという。

 e-Drive 2001は2日まで開催されているほか,e-Driveサイトではライブで特別講演やりんけんバンドが沖縄から参加するパネルディスカッションがストリーミング配信されている。

関連リンク

▼e-Drive 2001サイト

[浅井英二 ,ITmedia]