e-Day:ブロードバンドは儲かるか?

【国内記事】2001.11.01

 東京のお台場にある日航ホテルでブロードバンドのカンファレンス「e-Drive 2001」が開幕した。

 もう耳タコだろうが,日本はブロードバンドの普及・整備という点では大きく遅れをとった。そのため,故小渕首相が2000年7月にIT戦略本部を設置し,IT基本法や「e-Japan戦略」を矢継ぎ早に策定した。今やITは国是であり,2005年までに光ファイバー網の整備を完了,4000万世帯に10Mbps以上のブロードバンドを普及させるという目標が掲げられている。

 ブロードバンドのビジネス的な側面にフォーカスを当てた特別講演で,電通国際情報サービスの熊谷誠治主幹研究員は,光ファイバー網の活用によって,ブロードバンド接続のコストは大きく下がるとする。これまで光ファイバー網の上に電話交換システムが載り,その上に電話やモデム,ルータが目的に応じて層を重ねていたが,最新のネットワークでは電話交換システムをルータが置き換え,通信路を共有化できるようになるからだ。

「電話網離れが功を奏し,コストが下がり,スケールメリットも効いてくる」と熊谷氏。

 しかし,「ブロードバンドで儲かるかというと話は別」とも。

 そもそも米国では,ブロードバンドに過大な夢を抱いて,みんなが飛びついた。大きな資金がファイバーの施設やADSLサービスに投じられたが,あてがはずれて多くの業者が破綻している。

 ブロードバンドのビジネスを考えるとき,熊谷氏はその価値をしっかりと見極め,ビジネスの拡大に生かすべきだとする。

 ブロードバンドでは,時間が短縮され,広帯域に合った商品も流通できるようになる。訴求力のある広告が制作できるし,通信自体のコストも下がる。ビジネスのコストを下げられ,スピードアップを図れ,サービスレベルも高められるというわけだ。

「高画質の映像と声でナビゲーションできれば,顧客に対する商品の訴求力が増す。わかりやすさが重要なポイントになるだろう」(熊谷氏)

 インターネットの双方向性を生かし,手っ取り早く商品の情報を知りたい人には概略を,さらに詳しい情報が欲しいと感じた人にはすぐに解説を提供することもできる。

 ステージでは,ブロードバンドを生かした金融チャンネルのデモも行われた。カウンター越しにセールスレディーが金融商品を紹介してくれるという,ちょうどバーチャル店舗のようなイメージだ。個人のプロファイルに応じてパーソナライズされているため,食いつきもいいだろう。

 何よりも「ながら」がうれしい。声でナビゲーションしてくれているので,興味を引いたら,詳しい情報をさらに引き出したり,その場で申し込みを済ませることができる。テレビショッピングもこうしてやれば,すぐに「Buy Now」ボタンを押させて,購買率を高められるかもしれない。

 また,ブロードバンドの常時接続では,固定IPアドレスへのニーズが高くなっているが,これによって個人を特定することもできるようになる。

「ユーザーはプライバシーの問題を気をつけなければならない反面,ビジネスはそれを逃さず生かすべきだ」と熊谷氏は話す。

 ただ,「最新技術のコストは高いということにも気をつけなければならない。FOMAの料金の高さには驚いた」と,ビジネスの難しさも指摘する。NTTドコモの最安プランでも,256kビットが5円となる。仮にノートブックPCにFOMAの通信カードを挿し,300kbpsのストリーミング配信を楽しもうと思うと,3分間で千円札が飛ぶ計算だ。

「これでペイするビジネスなんて……」(熊谷氏)

 12月6日,7日には,熊谷氏がコーディネートする「IAJapan フォーラム 2001」(インターネット協会主催)がパシフィコ横浜で開催されるという。テーマは「考えよう,ブロードバンドでビジネスは広がるのか」だ。

[浅井英二 ,ITmedia]