CDN JAPAN,コンテンツ管理機能を備えたブロードバンド配信実験を開始

【国内記事】2001.11.13

 インターネットイニシアティブ(IIJ),日本オラクル,シスコシステムズなど8社による共同プロジェクト「CDN JAPAN」は11月13日より,CATVやADSLなどブロードバンド接続環境にあるユーザーを対象とした,ストリーミングコンテンツ配信実験を開始した。

 CDN JAPANの実験は,ブロードバンド向けのコンテンツ配信を支えるに足るネットワークやシステムコンポーネントなど,つまりプラットフォームそのものの検証を目的としている。13日より実験専用のWebサイトを開設し,コンテンツをダウンロードできる体制を整えた。

 この実験では,IIJのバックボーンであるHSMN(High Speed Media Network)に直結されたCATV事業者14社,およびSO-NETとIIJ4UのADSL接続ユーザーを対象に,映画やミュージッククリップなどエンターテイメント関連コンテンツの配信実験を行う。受信可能なユーザー数は25万規模といい,毎月入れ替えを行いながら,約150のコンテンツを提供する。

「将来的に見れば,教育用コンテンツなど他にも可能性はあるが,まずはエンターテイメント関連のコンテンツから提供することにした」(IIJマーケティング本部 副本部長,保条英司氏)。検証実験には,エム・ティー・ビー・ジャパンやスカイパーフェクト・コミュニケーションズなど,20社以上のコンテンツ事業者が参加を予定しており,各々が所有するコンテンツを提供する。

 これらコンテンツの配信フォーマットは,リアルネットワークスの「RealMedia」とマイクロソフトの「Windows Media」だ。エンコーディングは300Kbpsと1Mbpsの2種類で,「100%,ブロードバンドインフラを利用している人を対象にした」(保条氏)という。

コンテンツ管理や課金機能が鍵に

 ブロードバンド向けのコンテンツ配信については,既にNTT-MEのほか,有線ブロードネットワークスやアットホームジャパンなど,複数の事業者が同様にプラットフォームを模索している最中だ。

 CDN JAPANの実験は,エッジ側に単なるキャッシュサーバではなく,センター側のユーザー情報と連動できるコンテンツ配信用キャッシュサーバを配置するとともに,コンテンツ管理やユーザー管理,課金機能といった部分をサポートしていることに特色があるという。

「(アカマイやデジタルアイランドなど)既存のコンテンツ配信事業者のサービスの場合,こうした管理機能までは手が届いていない」(保条氏)。これに対しCDN JAPANでは,高い品質やコンテンツに対するセキュリティの確保といった要件を踏まえ,有料のコンテンツ配信に耐えうるプラットフォームを目指し,実験システムを構築した。

「センターと連携したキャッシュをネットワークエッジに配置し,しかもバックオフィス側の処理を備えたプラットフォームはこれが初めて」とする保条氏

 実験で配信されるコンテンツは,DRM(Digital Rights Management)によって暗号化される。これにコンテンツIDフォーラム(cIDf)が作成したコンテンツIDを組み合わせ,正規ユーザーのみがコンテンツを閲覧できる仕組みを作り上げた。閲覧の条件には,コンテンツ所有者のニーズに応じて,利用ISPや地域,あるいは閲覧回数といった要素を組み合わせることができる。

 バックエンドの仕組みだが,まずHSMNのネットワークエッジおよびコアにシスコシステムズのCDN製品群を二重化して配置する。ユーザーおよびコンテンツに付けられるIDは,日本オラクルのRDBMS製品「Oracle9i」によって管理され,ユーザー登録から認証,シングルサインオン,配信,課金に渡る一連のプロセスを管理する仕組みだ。

 このプラットフォームはさらに,どのユーザーがいつどのコンテンツを見たかをログとして記録し,コンテンツ事業者にレポートの形で提出する機能も備えている。こうした情報を,さまざまなマーケティング活動に利用する可能性もあるという。

 CDN JAPANでは2002年初頭より有料コンテンツの配信実験を開始し,3月末まで実験を継続する予定だ。

 なおCDN Japanとしては,今回の実験はあくまでも実証実験という位置付けであり,コンテンツ所有者や参加ISPに対する手数料などは取らない方針だ。同様に,有料コンテンツ配信実験の際も,料金設定はコンテンツ所有者側に委ねるという。

 このようにCDN JAPANでは,実証実験を通じ,プラットフォームの技術的な側面だけでなく,ビジネスモデルについても検証を進めていく。

関連リンク

▼CDN-Japan

[高橋睦美 ,ITmedia]