ブロードバンドならではのキラーアプリケーションは「ビデオ会議」

【国内記事】2001.11.27

 シスコシステムズは11月27日,プレス向けにH.323準拠のビデオカンファレンスのデモンストレーションを行い,それを支える製品群と今後の可能性について説明した。

 今回双方向通信のデモは,同社赤坂オフィスと新宿オフィス,米サンノゼにあるシスコ本社を結んで行われた。会場ではリアルタイムでの質疑応答などが行われたが,同社の説明によれば,既にシスコ社内でも,業務用ツールとしてこうしたビデオ会議を利用しているという。

シスコの赤坂オフィスと新宿オフィス,4地点を結んでのデモ

QoSならぬQoLを実現

 ブロードバンドという掛け声が耳につくこのごろだが,ではそのブロードバンドを活かしたアプリケーションとなると,はたと困るのが実情ではないだろうか。

 動画コンテンツの配信などには各社が参入しているのは事実だが,同社の桜井豊氏はこう語る。「電子メールやWebによって,我々のライフスタイルは,ちょっとだけとはいえ確実に変わった。しかし我々はまだ,その次に“ライフスタイルを変えるもの”を提示できていない」。

 では一体,ブロードバンドならではのキラーアプリケーションとは何か。その答えの1つとして,シスコシステムズは「ビデオカンファレンス」を挙げる。

 このビデオカンファレンスは,シスコ自身が利用しているソリューションでもあるという。「実際に使って“これは使える”と感じたものだ」と櫻井氏は述べ,これによりブロードバンドならではのメリットを実感できるとした。

 そこで提唱するのが,QoSならぬQoL(Quality of Life)である。「たとえば,ブロードバンドの太い回線を用いて,週末は自然の豊かなところでゆったり過ごしながらメールをチェックしたり,連絡を取ったりして,月曜はゆっくり出社するという過ごし方もあり得る」(櫻井氏)

AVVIDアーキテクチャの上でビデオカンファレンスを展開

 このビデオカンファレンスシステムを支える中核となるのが,4つのスロットを備えたH.323ビデオ会議システム,「Cisco IP/VC 3540」だ。これにMCU(Multipoint Control Unit)を組み込むことで,多地点を結んでの双方向会議を実現できる。

 しかもこの製品は,前世代のCisco IP/VC 3510に比べて6倍のキャパシティを実現した。128Kbpsのエンコーディングで最大100拠点を結ぶことも可能という。ただし,SIPへの対応は今後の検討課題だ。

 Cisco IP/VC 3540向けのモジュールとなる「H.320-H.323ゲートウェイ」は,ISDN回線を用いたH.320準拠のビデオカンファレンスシステムをIPネットワーク上に統合する機能を提供する。同社はまた,ユーザー間のアプリケーション共有を実現するT.120に準拠するためのアプリケーションサーバも提供している。

 さらに,同社のルータ用OS「Cisco IOS」のオプションとして提供される「Cisco Multimedia Conference Manager」は,呼の管理やアドレス解決,認証といったゲートキーパーの機能と,アドレス変換対応やQoSといったプロキシとしての機能の両方を実現する。

 こうした一連の機能により,特に企業アプリケーションでは重視されるセキュリティやQoSを実現しながら,ビデオ会議をもIPネットワーク上に統合できると同社は説明する。これは,シスコが以前より掲げるアーキテクチャ「AVVID」の一環でもある。

 デモでは最新バージョンとなるIP/VC 3540に,Cisco 2600シリーズ,PIX FirewallとVPNを組み合わせ,IPネットワーク上でセキュリティとQoSを維持しながらビデオカンファレンスを行う模様を実演してみせた。事実,音質はほぼ問題ないレベルに来ている。画像は,アップにするとやや苦しいのも事実だが,まぁ許容範囲といえそうだ。

サンノゼの本社オフィスとのビデオカンファレンスの様子。音声はほぼ問題ない

 なおシスコとしては,クライアント側の機器やソフトウェアには,H.323準拠でさえあれば特にこだわらない姿勢だ。今回のデモでは米ポリコムの製品を利用したが,その他のパートナーとも広く提携し,ビデオカンファレンスシステムの普及を推進していくという。

 ただ同社でも,国内でビデオカンファレンスの導入が進むのはまだこれからと見ている。だが,コスト削減や出張規制,企業そのもののグローバル化といった要因によって,これから徐々に普及するのではないかと期待を見せている。

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▼シスコシステムズ

[高橋睦美 ,ITmedia]