HP CoolTown実現のカギ,組み込みJava環境「Chai」

【国内記事】2001.11.28

 JavaOne 2001 Japanが11月28日,3日間を予定してパシフィコ横浜で開催された。同日,日本ヒューレット・パッカード(HP)は,会場近くのホテルでプレス向けのブリーフィングを行い,プリンタやPDAなどの情報家電や産業機器向けの組み込みソフトウェア環境「Chai」について紹介した。

 Chaiについて説明した米HPの組み込み製品のマーケティング担当シニアディレクターを務めるボリス・テクスラー氏は,「Chaiは,“CoolTown”実現のためのキーテクノロジー」と話す。

 CoolTownは,あらゆるデバイスが自らのホームページを持って,インターネットを介して相互に連携する環境として,同社が提唱しているもの。デバイスを選ばないことで,ユーザーが時間や場所を選ばずに必要なサービスを受けられるような世界を作ることを同社は目指している。

Chaiのアプライアンスプラットフォーム

 Chaiのアプライアンスプラットフォーム全体の中で中心的なコンポーネントとなるのは,実行環境の「ChaiVM」,Webサーバとしての機能とサービスを実行するためのプラットフォームとなる「ChaiServer」,組み込み製品向けのWebブラウザ「ChaiFarer」の3つだ。

 Chaiで構築された製品の利用に関して,例えば,ChaiServerを搭載したプリンタは,自身のホームページを持っているため,ユーザーは自分のPCのブラウザから同プリンタのURLにアクセスできる。設定の変更や状況の監視もスムーズに行える。また,メールも配信できるため,インクやトナーの残量が減った場合は自ら交換の発注をかけることもできるという。

 Chaiが利用されている組み込み製品には,HPのレーザージェットプリンタやJornada,デンソーのテレマティクス向け社載サーバなどが挙げられている。

メモリ管理に優れたChaiVM

 ChaiVMはHPが組み込み向けに独自開発したバーチャルマシンで,現行のバージョンではJDK1.1.8,セキュリティについてはJDK1.2にの仕様に準拠している。組み込みデバイスの多くはあまりサイズが大きくないため,限られたメモリを使っていかに速いアプリケーションの実行環境を提供するかに神経が注がれているようだ。

 最も目を引くのは,同社が特許を持つという「フリーズドライテクノロジー」だ。これは,Javaのクラスファイルの大きさを50%から90%縮小するというもの。端末機器はメモリの使用量を少なくでき,ダウンロード時のネットワークへの負担も減らすことができる。

「フリーズドライによって,パックマンのゲームも157キロバイトから21キロバイトになった」(テクスラー氏)

 さらに,ChaiVMはフリーズドライされたフォーマットを,いわゆる「解凍」などをせずに直接読み込めるため,Javaの欠点である初期起動の遅さが改善されるという。

 また,組み込み機器にJavaは馴染まないとされる要因にリアルタイム性の欠如がある。その原因となる作業「ガベージ・コレクタ」を,ChaiVMはアプリケーションとは別のスレッドで実行するため,高いリアルタイム性を確保できているという。

 加えて,コンパイラについて,同社が開発した「TurboChai」は,端末器側でコンパイルをかけるJITコンパイラではなく,AOT(Ahead-Of-Time)コンパイラだという。そのため,端末に数メガバイトというメモリ負担をかけるJITコンパイラの欠点を回避し,パフォーマンスを改善できるとしている。

 なお,ChaiVMはプリンタやスキャナ,PDAなどをカバーする一方,手持ち機器の多くやハンディターミナルなどのデバイス向けには,「MicroChaiVM」が用意されている。

 MicroChaiVMについて,携帯電話などCDMAの無線機器用のアプリケーション実行プラットフォームとして,クアルコムの「BREW」とMicroChaiの組み合わせも,この日紹介されている。

関連リンク

▼日本ヒューレット・パッカード

[怒賀新也 ,ITmedia]