SGI Solution Fair 2001基調講演:SGI,NEC,NECソフトの資本協力は「3本の矢の訓え」

【国内記事】2001.11.29

「数値/テキスト処理だけの時代は完全に終わった」

 日本SGIは11月29日,「SGIが変わる,SGIが変える」をテーマに「SGI Solution Fair 2001」カンファレンスを都内ホテルで開催。基調講演に登場した日本SGIの代表取締役社長,和泉法夫氏は開口一番で言い放った。

「テキスト処理だけの時代は完全に終わった」と和泉社長

「(SGI創業者である)ジム・クラークにより創造されたCG(コンピュータ・グラフィック)市場と,それを高速に処理するために研究され続けたHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)分野に,ブロードバンドが加わることで,IT市場は完全にコンテンツ中心のソリューションへと変遷した。次に変わるのはわれわれ自身だ」(和泉氏)

NEC,NECソフトの資本参入の誤解

 SGIは10月26日,米SGIが保有する日本SGIの株式の一部をNECとNECソフトが取得することを発表した。この発表により日本SGIは,米SGIとNECがそれぞれ40%ずつの株式を保有する筆頭株主となっている。今回のテーマの1つである「SGIが変わる」という言葉には,この発表によるNECとのより一層の協力関係を深めビジネスを拡張するという意味も込められている。

 この件に関して和泉氏は,「SGIがNECの子会社に……」というネガティブな報道が一部にあったため,その誤解を解くことに基調講演の大半の時間を割いた。

「ビジュアライゼーション(可視化)とスケーラビリティ,そしてブロードバンドにより推進するコンテンツ中心のソリューションの提供がわれわれのコアコンピタンスであることに変わりはない。NECの得意とする既存のビジネスシステムとSGIのソリューションを連携することで,次世代のビジュアルITソリューションを実現できるだけでなく,よりきめ細かいサポート体制を短期間で確立できた」(和泉氏)

 和泉氏は,コンピュータ業界はIBMを中心とした「システムの時代」からマイクロソフトを中心とした「PCの時代」,さらにシスコを中心とした「ネットワークの時代を経て「コンテンツの時代」の入り口にあるという。NECとの強力により,そのコンテンツの時代にいち早く到達したのがSGIであり,今後は同社がその中心になるという。

 ただし,同社が考えているブロードバンドとは,現在主流のADSLの世界ではなく,光ファイバーが企業や家庭の末端まで行き渡る一歩先の世界を見据えたものだ。和泉氏は,「ちまたでは,ブロードバンド対応という製品があふれているが,例えばWindows Media Playerがブロードバンドではない」と言い切る。

「100Mbps時代の到来が真のブロードバンド時代の到来。ADSLはその過程に過ぎない」(和泉氏)

SGI,NEC,NECソフトは「3本の矢」

 続いて登場した米SGIのCEO(最高経営責任者),ロバート・ビショップ氏も和泉氏の言葉をフォローして,「われわれは,ERPやSCM,CRMなどの既存のビジネスシステムに興味はない。あくまでもSGIは,研究開発や設計,製造ライン管理,シュミレーションなど,企業のビジネスのコアの部分の支援にフォーカスする」と言う。

「e-コマースからm-コマースへ」とビショップCEO

 ビジネスシステムの部分はNECに任せ,そこにSGIの得意とする可視化,HPC,ブロードバンドを組み合わせることで,e-コマースを超えた「m(メディア)-コマース」を実現するとしている。

 またNECグループとの協力関係が,SGIにもたらす最大のメリットを,「日本国内における保守体制と品質管理体制を短期間で実現できること」という。外資系企業であるSGIにとって,保守と品質管理を日本国内の隅々まで行き渡らせることは容易なことではない。しかし今回,NECの既存のサポート部隊を利用することで,この体制をすぐに実現できたとしている。

「SGI,NEC,NECソフトの協力により,“3本の矢の訓え”の通り強力なソリューションを顧客に提供できる」(ビショップ氏)

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[山下竜大 ,ITmedia]