Javaテクノロジーの王様はやっぱり「J2EE」

【国内記事】2001.12.03

 先週11月28〜30日の3日間,米国サンフランシスコ以外では初めてとなる「JavaOne 2001 Japan」カンファレンスがパシフィコ横浜で開催された。誰もが予想できることではあるのだが,日本で初めて開催されたJavaOneの中心は,やはり携帯電話向けのJavaソリューションだった。

 本家サンフランシスコのJavaOneでは,企業向けのJavaソリューションが中心だったが,ここ数年はNTTドコモやJ-フォンをはじめとする,日本の携帯電話向けJavaソリューションが数多く紹介されている。これまで米国では,「日本の携帯電話市場は特殊なケース」と言い続けてきたが,さすがに本家としても日本の携帯電話事情を無視できない状況になってきた。これが日本でJavaOneが開催されるに至った経緯ともいえる。

 日本国内では現在,NTTドコモのiアプリ対応携帯電話だけでも累計870万台を超え,4800以上のJavaアプリケーションが利用されているという。また,欧米でもサービスの開始を表明しているという状況からすればいたしかたないところか……。

基盤となるのは「J2EE」

 この携帯デバイス向けのJavaソリューション以外に注目すべき点を挙げるとすれば,やはりJavaソリューション実現のための基盤となるJava 2 Enterprise Edition(J2EE)だ。なぜなら携帯デバイス向けのJavaソリューションでは,この基盤の構築しだいで,拡張性,柔軟性,信頼性,可用性,パフォーマンスなどに大きな差が生まれることになるからだ。

 この基盤となるのが,アプリケーションサーバ製品と呼ばれているもので,JavaOne 2001 Japanの展示会場でも,日本BEAシステムズの「BEA WebLogic」をはじめ,ATGの「ATG Dynamo」,日本ティーマックスソフトの「JEUS」,ユニファイジャパンの「eWave」など,さまざまな製品を見ることができた。

 現在,アプリケーションサーバと呼ばれているもののほとんどは,J2EEに準拠し,XMLやCORBAなどのインターネット標準技術をサポートすることで,ほかのシステムやアプリケーションとの柔軟な連携を実現。負荷分散やクラスタリングによる拡張性や可用性,セキュリティによる信頼性を兼ね備えたJavaベースのプラットフォームを実現できる。

 アプリケーションサーバ製品を企業システムの中核に置くことで,既存の企業内システムをWebシステムと統合できるだけでなく,企業間のシステムを容易に連携することが可能。これまで,複雑な仕組みによりなかなか実現できなかったEAI(企業アプリケーション統合)やB2BおよびB2Cシステムを,よりシンプルに実現することができる。

 また,SOAP,UDDI,WSDLにより実現されるシンプルなWebサービスも実現可能だ。Webサービスを実現することで利用者は,必要とするサービスがどこにあるかを知っていなくてもインターネット上から自動的に見つけ出し,さまざまなデバイスを経由して簡単に利用することが可能だ。

 さらに近い将来,BEAやIBM,マイクロソフトなどが中心となって標準化を進めているBTP(ビジネス・トランザクション・プロトコル)などを利用して,Webサービス上のトランザクション処理を管理したり,ビジネスプロセスを管理したりすることも可能になる。これによりインターネットを利用して,航空券とタクシー,ホテル,そしてミュージカルのチケットのすべてが予約できたときだけ,処理を有効にし,そうでなければ処理を中断するような,より複雑なWebサービスを実現することもできるという。

J2EE上で実現される携帯ソリューション

 こうして企業内外のシステムを連携することで,さまざまなデバイスに向けたサービスを迅速に展開することが可能になる。

 今回,JavaOne 2001 Japanで注目された携帯デバイス向けソリューションの多くが,アプリケーションサーバを中核に統合された企業システムを携帯電話から利用可能にし,業務の生産性を向上させ,システム開発・運用コストを削減しようというコンセプトの基に開発されたものだ。

 JavaOne 2001 Japanの展示会場をざっと歩いて見たが,富士通の「INTERSTAGE APWORKS」,NECの「モアレッシモ」,テクマトリックスが提供する米アリゴの「Aligo M-1」,インプローブ・ネットワークスの「CAFEMOON Mobile Services Platform」など,バックエンドの企業システムを,携帯電話から利用可能にするさまざまなJavaソリューション構築製品が数多く出展されていた。

 これらの製品の特徴は,J2EEプラットフォームをベースに,XMLなどのインターネット標準技術を利用して,さまざまな携帯デバイス向けサービスを短期間に実現するというものだ。これらの製品を利用することで,Java対応携帯電話を,これまで主流だったコンシューマ向けサービス分野だけでなく,ビジネス分野で利用できる「ツール」に変えることが可能になる。

 今回のJavaOne 2001 Japanでは,Java対応携帯電話がの情報があまりに前面に出たために,J2EEに関する新しいメッセージが隠れてしまった感がある。しかしJavaテクノロジーの中核はやはりJ2EEであり,J2EEプラットフォームの実現こそが,Java対応携帯電話をビジネス分野に迅速に移行させるための要といえるだろう。

 やはりJ2EEこそが,Javaテクノロジーの王様なのだ。

[山下竜大 ,ITmedia]