Linux開発者トーバルズ氏とGNUのストールマン氏来日,マイクロソフトについても語る
【国内記事】 | 2001.12.04 |
財団法人の武田計測先端知財団は12月4日,同財団が表彰した第1回武田賞受賞者がその業績について話す「2001年武田賞フォーラム」を都内のホテルで開催した。情報・電子系応用分野では,Linuxを開発したリーナス・トーバルズ氏やフリーソフトウェア財団のリチャード・ストールマン氏,組み込みOSであるTRONの開発を行った東京大学教授の坂村健氏の3人が同賞を受賞した。賞金は各応用分野ごとに1億円。複数の受賞者がいる場合は分割して支払われるという。
武田計測先端知財団は,「テクノアントレプレナーシップに富む方々によって創造された工学知とその活用の成果に対して贈る賞を創設したい」として,2001年4月に設立されている。タケダ理研工業(現在はアドバンテスト)創業者の武田郁夫氏が理事長となっている。
情報・電子系応用分野について,受賞した3人に共通した理由として,「オープンなコンピュータ基本ソフトウェア開発について,モデルを提唱し,実践に貢献したこと」が挙げられている。
受賞の盾を見せるトーバルズ氏(上)とストールマン氏(下) |
冒頭,受賞の感想を求められたトーバルズ氏は,「受賞できてホットした」と一言。同氏は,幼少の頃は科学者をアイドルと崇拝していたという。「1エンジニアとなりノーベル賞をもらうこともないけれど,それに代わる賞をもらえてうれしい」と喜びを表現した。典型的な「エンジニア像」とも重なるが,同氏はいわゆるシャイな人柄だ。
また,ストールマン氏は,「私は特定の企業や大学に所属していないため,キャリアとしてもうれしい」と話す。「フリーソフトウェア運動に1人でも加わってくれることを願う」とした。同氏の選考理由としては,フリーソフトウェア概念の確立とGNUオペレーティングシステムの開発が挙げられた。
TRONを開発した坂村氏は,Linuxやフリーソフトウェアに比べて「TRONは地味なのでこれまではあまり注目されなかった。スポットライトを当てていただき感謝している」とコメントしている。
唯一の日本人受賞者となったTRON開発者の坂村氏 |
マイクロソフトの活動は「反社会的だ」
オープンソースコードのLinux,フリーソフトウェアのGNUはこれまで幾度となく,それぞれの仕組みのオープン性について,マイクロソフトと比較されてきた。
ちなみに,「オープンソース」は,1998年にトーバルズ氏など10人程度が作った言葉であり,1984年に始まったGNUプロジェクトの「フリーソフトウェア」とは用語的に明確に分けるように,この日ストールマン氏は釘を刺した。
そのストールマン氏にマイクロソフトについての考えを聞いた。
写真撮影におどけるストールマン氏 |
「“自由なソフトウェア”が我々の考え方だ。Windowsは,独自仕様であり,変更や改良ができない後ろ向きの論理で成り立っている」(ストールマン氏)
さらにストールマン氏からは,「(マイクロソフトの活動は)独自性に対する反社会的な活動である」と過激な発言も飛び出した。
「フリーソフトウェアがもし性能的に劣位であったとしても,自由のために推進したい」(ストールマン氏)
一方,トーバルズ氏は,「マイクロソフトとの比較はいろいろな人が十分過ぎるほどやってきた」と話す。
「反マイクロソフトと思われたくはないので,コメントは避けたい」(トーバルズ氏)
なお,武田賞はほかに,生命系応用分野,環境系応用分野が受賞対象となっている。
生命系応用分野では,高性能全自動DNAシーケンサの開発とセレラ社設立を推進した,アプライドバイオシステムズ社長のマイケル・ハンカピラー氏と,セレラ社設立とゼンゲノムショットガン戦略の構築による大規模ゲノム解析システムを確立したセレラ・ジェノミクスのJ・クレイグ・ベンター氏が受賞した。
また,環境系応用分野では,環境負荷尺度「エコリュックアックとMIPS」を提唱したドイツのフリードリヒ・シュミット・ブレーク氏と,エルンスト・U・フォン・ワイツゼッカー氏が選ばれている。
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[怒賀新也 ,ITmedia]