OOW 2001 San Francisco基調講演:「Unbreakable」を武器にIBMを叩くエリソンCEO
【海外記事】 | 2001.12.04 |
12月4日,Oracle OpenWorld 2001 San Franciscoでオラクルの総帥,ラリー・エリソンCEOの基調講演が行われた。例年どおり,2日目の午後に登場したエリソン氏は,言葉を巧みに操りながら聴衆をぐいぐいと引き込み,今回のOracle OpenWorld(OOW)のテーマである「Unbreakable - Oracle」(不死身のオラクル)というメッセージで洗脳した。
「われわれは15年前,すべてのコードを捨て,Oracleを書き直してバージョン6を開発した。それはなぜか? たった1つ,“クラスタリング”のためだった」(エリソン氏)
聴衆の反応に酔うかのように時間を追うごとに饒舌でカリスマ性を帯びてくるエリソンCEO |
米国などでは6月に出荷が始まったOracle9iでは,クラスタ機能がほぼ満足いく仕上がりを見せ,「Real Application Cluster」(RAC)機能として搭載された。
Oracle9i RACは,複数のコンピュータが,1つのデータベースにアクセスする「シェアードディスク」方式を採用しており,1台のサーバマシンがダウンしても,そのトランザクションはほかのサーバへフェールオーバーされ,信頼性は高まる。また,サーバを追加すれば,それだけ性能が向上するのもこの方式の特徴で,限界のない拡張性と高い経済性が大きな魅力となる。
最近,オラクルはIBMを容赦なく叩いているが,エリソン氏はさらに手厳しく,「IBM DB2は,マーケティングだけのクラスタに過ぎない。クラスタ化でメリットがあるのはベンチマークとカスタムアプリケーションだけだ」と一蹴する。
シェアードディスク方式を採用するのは,OracleとIBMメインフレーム版のDB2だけ。データをあらかじめパーティショニングする必要もなければ,頻繁に更新されるデータベースにも有効だ。
シェアードナッシング方式を採用するマイクロソフトには,「SQL Serverは,サーバを増やせば増やすほど,お金を使えば使うほど信頼性が落ちていく。“素晴らしい”アイデアだ」と皮肉った。
「マイクロソフトのシステムには,きっとUnbreakableの予算が必要になるだろう」(エリソン氏)
矛先をIBMに戻すと,今度は「IBMは賢いから,マイクロソフトの真似をしたんだろう」とやった。
同じDB2でもメインフレーム版とUNIX/Windows NT版は,名前こそ同じだが,全く似て非なるものだ。「なぜ全く違う製品に同じ名前を付けるのか」とエリソン氏は容赦なく口撃を続ける。
Oracle9i RACならシーベル,ピープルソフト,SAPでもすべてそのまま走らせ,信頼性を高められるし,Oracle9i RACは,ほぼリニアに近い拡張性も期待できる。例えば,SAP SDベンチマークで,4ノード構成で330%に性能が向上するが,UNIX/Windows NT版のDB2では惨憺たる結果に終わる。
「これは私がつくったスライドじゃない。IBMのエンジニアが,DB2ユーザーカンファレンスで明らかにしたもの」と前置きしながら,2ノードで性能が半減し,4ノードでも1ノードを上回れないというSAPのSDベンチ結果を紹介した。
「つまり,クラスタでは使えないということだ」(エリソン氏)
アプリサーバもUnbreakable!
この日,正式に発表された「Oracle9i Application Server Release 2」にもオラクルは,クラスタキャッシュやダイナミックリコンフィギュレーションといった機能や,さらに他社より一歩先んじたクラスタ機能を搭載している。
もちろんIBM WebSphereやBEAシステムズのWebLogicでも,負荷分散や単純なフェールオーバーはサポートしているが,新しいOralce9i Application Server(Oracle9iAS)では,「Fast Start Fault Recovery Architecture」が採用され,トランザクションも引き継ぐことができる。つまり,アプリケーションサーバ層とデータベース層で一貫してトランスペアレントなフェールオーバーが行われるわけだ。
エリソン氏は,とかくオラクルの製品は高いと批判されている点についても,同じ条件でIBM DB2と比較した幾つもの価格表を見せながら,「りんごはりんごと比較してほしい」とした。
それらによると,データウェアハウスをはじめ,アプリケーションサーバ+ポータル機能,アプリケーションサーバ+ビジネスインテリジェンス機能など,Oracle9i製品の価格はどれをとってもIBM製品の3/4から1/9に過ぎない。
基調講演後のプレスQ&Aセッションでは,「かつてはソフトウェア業界のメルセデスベンツと言われたが,IBMより安い」と念を押した。しかも,Oracle9i RACやOracle9iASでは,比較的安価なインテルボックスを追加していくことで信頼性と性能を高めていくことができる。
Sun Enterprise 10000(通称:Starfire)の64CPU構成を2ノードだと500万ドルもするが,4CPUのSun Enterprise 420Rを32ノードなら100万ドルで済み,コンパックのIAサーバなら75万ドルとさらに安い。
この日,Release 2が正式発表されたOracle9iASは,同社の2002年度第1会計四半期(8月末締め)だけで2500の顧客を獲得し,合計の顧客数は8300に達し,BEAとIBMを激しく追い上げている。
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[浅井英二 ,ITmedia]