OOW 2001 San Francisco特別講演:華の消えたネットスケープの天才が語るインターネットの今後

【海外記事】2001.12.04

 12月4日,「Oracle OpenWorld 2001」の特別講演に,かつて「ネットスケープの天才」と呼ばれたマーク・アンドリーセン氏が登場した。同氏は現在,ホスティングやWebサイト管理サービスを提供する企業,ラウドクラウドの共同創設者兼会長を務めている。

アンドリーセン氏。痩せた……

 7000席が用意されたキーノート会場で行われた今回の特別講演だったが,人影はまばら。講演の冒頭から同氏は,持ち前の早口で企業のシステム投資について熱く語ったものの,かつての華々しさは消え去ったのか,栄枯盛衰の激しいIT業界を感じさせる。

「企業は,5年,10年先を見据えた戦略的なシステム投資を行うべきだ」と至極「ごもっとも」な話が中心だったのだが,最後のQ&A(質疑応答)で「では,次に生まれるアプリケーションはどのようなもの?」との質問が飛ぶと,たじたじになってしまう。

「とてもいい質問ですね。インターネット技術は,非常に新しいものです。“まだまだこれからの技術”なのです。今後さまざまな技術が生まれてくるでしょう。では,次の質問……」(同氏)

 こちらとしては,せめてその技術の方向性だけでも示してほしいのですが……。

本当の価値が分かるのは8年後

 ただ,アンドリーセン氏がラウドクラウドの宣伝に時間をかけなかったことは評価したい。同氏は,講演でインターネットの現状をどう捉えているのかを披露してくれた。

 同氏は,「1990年代のはじめ頃,だれもインターネットを真剣に考えていなかった。半ばになって,“インターネットを使わざる者,人にあらず”という論調が出てきた。そして後半,ビジネス利用ニーズへと向かった。現在は,過大評価が見直される時期にある」と話す。

 次の段階に向かうヒントとして同氏は,9月11日に米国を襲ったテロ事件で企業が学んだ教訓が3つあるという。電話回線がダウンしたにも関わらずITネットワークが利用可能だったことで,インターネットの価値が見直されたこと,どこからでもWebブラウザからアクセスできるアプリケーションがなければ災害時に業務が止まってしまうこと,そして災害復旧のための拠点を遠くに置くべきということだ。

 これらは現在の技術でも実現できることだが,インターネットの真価を捉えるための1つの側面として機能するという。

 また同氏は,PCの浸透とインターネットの浸透が,ほぼ同じスピードで進むと予測する。

「PCがビジネス面で注目されてから本格的に商業ベースに乗るまで8年かかった。インターネットの“本当の価値”が普及するには,同じくらいの時間が必要になるはず。今後,リアルタイムインターネットビジネスの誕生によって,企業が必要とするさまざまなアプリケーションが生まれるはずだ」(同氏)

 とりあえず想像を巡らせながら,8年後を楽しみに待つとしよう。

関連記事

▼クエストを頼るラウドクラウド

関連リンク

▼日本オラクル

▼ラウドクラウド

[井津元由比古 ,ITmedia]