Life Sciences Day:エリソンCEO,急成長するライフサイエンスに照準

【海外記事】2001.12.05

 オラクルは12月5日,「Life Sciences Day」を開催し,急成長が見込まれるライフサイエンス(生命科学)分野に本格的に取り組む姿勢を明らかにした。

 同カンファレンスは,サンフランシスコでOracle OpenWorld 2001 San Franciscoの会期中に行われたもの。会場となったダウンタウンのフェアモントホテルには,ゲノム(遺伝子)解析で知られるセレラ・ジェノミックスの社長兼チーフ・サイエンティフィック・オフィサーを務めるクレイグ・ベンター博士が招かれたほか,ラリー・エリソンCEO以下,米オラクルからも主だったエグゼクティブたちがズラリと顔をそろえた。

 450名近いライフサイエンス業界の関係者を前にエリソンCEOは,「ライフサイエンスは最も重要な分野」とし,バイオテクノロジーやそれをベースとしたバイオ創薬にとって必要な機能を将来のOracleデータベースに盛り込んでいくことを約束した。

「アメリカズカップを取り戻すのもいいが,それは重要じゃない。ガンの治療法を見つけることは重要だ」と,自らの母親をガンで亡くしているエリソン氏は話す。

ライフサイエンスを戦略的分野と位置付けるエリソン氏

 米オラクルでデータベースサーバを担当するアンドリュー・メンデルソン上級副社長は,Oracleデータベースの方向性を示す講演の中で,ライフサイエンス分野におけるITのチャレンジとして,膨大なデータの扱い,信頼性と拡張性,そして隠されたパターンを見つけ,ほかとの関連性を探ることの3点を挙げた。

 現在,解析されたゲノム情報は,フラットファイルのまま公共的なデータベースに集約されている。そのせいもあってか,意外なことにリレーショナルデータベース化がなかなか進んでいないのが実情。オラクルでは,フラットファイルで情報を出し入れできるようXML対応を一層進めるほか,データマイニング機能やテキストマイニング機能も搭載していくという。また,公共的なゲノム情報データベースに対するサーチを可能にするバイオ業界固有のアルゴリズムもOracleの将来バージョンで組み込みたいとしている。

 エリソンCEOは,「ほかの業界でも固有の機能を追加? いや,ライフサイエンスだけだ」とし,この業界に対する並々ならぬ意欲を示した。

ペタバイト! エクサバイト!

 セレラ・ジェノミックスは,ハイパフォーマンスコンピューティングのパワーを生かし,瞬く間にヒトゲノムを解読したことで世界を驚かせた。900基以上のAlphaプロセッサをインターコネクトしたCompaq AlphaServerでOracleを走らせ,Compaq StorageWorksで100テラバイトを超えるデータベースを構築している。サーバとストレージを提供するコンパックでは,ゲノムのデータベースは6カ月から8カ月で2倍に膨れ上がると予測しており,これはムーアの法則の2倍だ。

 セレラのベンター博士は,「ゲノムデータで250テラバイト必要で,これが(創薬に結びつく)たんぱく質のデータになるとペタバイト級になり,さらに個人のゲノム情報から薬を作ろうとするとエクサバイト級に膨れ上がるだろう」と話した。

 こうしたチャレンジにもエリソンCEOは,「現在,テラバイト級のデータベースはほとんどOracleで管理されている。ストレージ業界の協力も必要になるが,われわれはペタバイト以上のデータベースを視野に入れてOracleを機能強化している」とした。

 なおオラクルは,京都大学バイオインフォマティックスセンターのゲノムネットに採用されているほか,宝酒造のスピンオフであるドラゴンジェノミックスも顧客となっており,日本のライフサイエンス分野でも実績を重ねている。

 今年春には米国オラクルと日立製作所がたんぱく質の解析で協力することを発表したほか,10月初めには製薬会社の臨床試験プロセスを管理する「Oracle Clinical マルチリンガルバージョン」を伊藤忠テクノサイエンスらと販売することも明らかにしている。

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[浅井英二 ,ITmedia]