Linux Column:「Live Free or Die ?」〜自由は死んだのだろうか?

【国内記事】 2001.12.11

 先週,GNOMEをベースにしたデスクトップソリューションを提供しているシミアンが新製品「Ximian Evolution 1.0」を発表した。電子メールやカレンダーを中心にした個人情報ツール(PIM)であり,この手の製品が不足していたLinuxには非常に魅力的に見える製品だ。

 さらに同製品は,モジュールを追加することでマイクロソフトのExchangeのクライアントとして使えるようになるという。筆者自身は,単純なSMTP/POPなメールしか使っていないのだが,人によってはありがたい製品なのだろう。日本語が使えるかは定かではないが,日本でもそれなりのニーズがあるのではないだろうか。

 しかし,前者はフリーで配布されるが,後者はクローズドソースでプロプラエタリィなライセンスになっている。果たしてこれをどう見ればよいのだろうか。

 純粋な自由主義者は修正主義だと思うだろうことは想像に難くない。フリーなソフトウェアをテクノロジーコアにしている企業が,対極とも言えるライセンシーを行うのはけしからんというわけだ。一方,現実主義者は「霞を食べて生きているのではないのだから」とやむを得ない措置だと考えるだろう。確かに企業として存続していくには確実な売上が必要だ。

 私自身の意見は,果たしてどちらだろうかと,このニュースを聞いて考えた。前回も書いたが,今後のオープンソースビジネスの方向性というのは非常に流動的だからだ。

 ただ,原点に立ち返れば,オープンソース運動(筆者自身は「フリーソフトウェア運動」だと思う)がなぜこれだけの支持を得られたのかを考えれば,間違いなく現在のクローズドソースでプロプラエタリィなライセンスに縛られたソフトウェア業界の現状に対するアンチテーゼではないだろうか。

 エンタープライズレベルのユーザーシステムをオープンシステムで構築するには,ごく限られたIT予算を確保できる企業は別にして,オープンソースこそが間違いなくソフトウェア技術者が自信と誇りを持ってユーザーに対してシステムを構築し提供できる手段だろう。

 3年ほど前のことを「ふっ」と思い出した。私は,だれでも名前を知っている大手SI企業の偉い方にLinuxソリューションの話をさせていただく機会を得た。その方はさすがにオープンソースには懐疑的であり,私に「オープンソースで儲かるのは誰か?」と質問をしてきた。彼は「SI企業だ」という。ライセンスに金銭的価値がないからこそ,システム構築やサポートサービスを付加するSI企業が儲かるだろう,ということだ。

 しかし私の答えは「エンドユーザーだ」と答えた。間違いなく,最もよいシステムをエンドユーザーに提供することを第一に考えなくては,どんな価値も生まれないだろうと考える。そしてその考えは今も変わらない。

 そういう意味で,筆者としてはシミアンが理想主義を捨てざるを得なくなってしまったことが,期待が大きかっただけに残念でならない。確かに,展示会などで見ている限りではあまりビジネスは上手ではなさそうだったから……。

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[宮原 徹びぎねっと]