Linux Column:Linux「ゆく年くる年」(2001年ゆく年編)

【国内記事】 2001.12.18

 早いものでもう今年も残すところ2週間となった。そこでどこでもやっていることだが,今回と次回の2回に分けて,「ゆく年くる年」というお題で,今年のLinux市場を振り返り,来年のLinux市場を占ってみたいと思う。

 今回はまず,2001年のLinux市場を振り返ってみる。

 ちなみに今,筆者は札幌にいる。17日に札幌で,Linuxセキュリティに関するセミナーを行うためだ。ニュースでも伝えられている通り,札幌は観測史上で最大の大雪で,1日の積雪が50センチを越えたという。札幌駅のすぐそばなので一面真っ白,というわけにはいかないが,窓の外はかなりの雪だ……。

 同じように,今年1年のLinux市場も白かった。というよりも,コンピューター業界全体が白かった「空白の1年」のように思える。

 今年だけでなく,この3年ぐらいまで振り返ってみると,2年前(1999年)は,Linux市場がようやく入り口に辿り着いた,というところだった。「フリー」であることを誤解され,信用されず,「オモチャ」呼ばわりされ,「業務には使えない」という印象がまだまだ拭えなかった時期だ。そして昨年,さまざまな企業がLinux市場に参入し,一気にLinuxビジネスが盛り上がった年と言える。

 そして今年……。今年は,年明けからなんとなく,「階段の踊り場」という感じが市場全体に漂っていた気がする。新しいことにチャレンジするのではなく,これまで登ってきたところを確認して,ちょっと一休みという感じだ。カーネル2.4もリリースされたが,大きな機能追加があったわけではなく,安定性やパフォーマンスアップに力を注いだのもそのような傾向にあったためだろうか。

 2月に米国ニューヨークで開催されたLinuxWorldも,8月のサンフランシスコで開催されたLinuxWorldも,5月および10月に東京で開催されたLinuxWorldも,今1つ盛り上がりに欠けたような気がする。なんとなく,ビジネスサイドはLinuxをセールス的なボリュームゾーン,つまり旧来ローエンドからミドルレンジUNIXがカバーしていたエリアに持ってきたかったのに対して,ユーザー側はWindows NT/2000の代替品,という感じで捉えていたようなギャップが感じられた。

 この傾向は,決して悪くはない。少なくとも,2年前の,まだ入り口というところよりはよっぽどLinux市場は認知された。反面,あまりにも安定しすぎてしまってダイナミズムというか「面白さ」が感じられないのも事実だ。しかし今のIT業界にダイナミズムがあるかというと甚だ疑問であるだけに,これも止むを得ないところか……。

 全体的な見方をすれば,今年のLinuxはなんとなくこれといったポイントがあげられない曇り空のような感じだったが,局所的には晴れていたのも事実だ。

 その晴れていた分野の1つが組み込み系での利用だ。この分野では,いくつもの意欲的なLinux組み込みデバイスが発表されている。特にIBMとシチズンが共同開発した「WatchPad」などは際たる例だ。早くウルトラ警備隊ばりのビデオトランシーバーが欲しくなってしまう。FOMAと組み合わせれば実現可能だ,と勝手に思い込んでいる。

 ブロードバンドの普及による関連機器への組み込みもその萌芽が見えた。Linuxがサーバ用OSであると考え,WindowsやSolarisなどと比較してしまうと,今1つ「パッ」としなかったように思えるが,確実に「Linuxらしさ」を発揮している分野はあるということだ。

 これまでは,表舞台でさまざまなユーザーが「Linuxを使っています」とアピールする,されることが多かったが,今年は「いや,実はLinuxを使ってるんですよ」ぐらいのさりげなさでLinuxが利用される。そんな感じの1年だったような気がする。

 つまり,今年のLinuxを天気予報的な言い方で表せば「曇り,ところにより晴れ」ぐらいだろうか。

 さて,次回はそんなことを踏まえて,来年のLinux天気予報をお伝えしよう。

[宮原 徹びぎねっと]