久々登場のジスマン氏,IBMに俊敏さを吹き込むロータス技術を紹介

【海外記事】2002.01.30

 懐かしい人が再びオーランドのLotusphereに戻ってきた。1996年1月,IBMによってロータスが買収されてから初めてのLotusphere 1996 Orlandにキーノートスピーカーとして登場して以来,マイク・ジスマン氏は,決して派手さはなかったが,まさにこのカンファレンスの顔だった。

現在,IBMで振興技術担当の副社長を務めるジスマン氏

 今でも思い出すのが,「インターネットの登場でNotesは死んだ? 私は“Notes is dead.”is dead.と言いたい」という当時会長兼CEOだったジスマン氏の誇らしげな言葉だ。彗星のように現われたネットスケープの前に,一時は,あのマイクロソフトと共に「インターネット対応に出遅れた」とメディアから烙印を押されたが,1996年のLotusphereでNotes 4.0の出荷を祝い,形勢を一気に逆転させた。

 ジスマン氏は当時,「Webシステムは,分散されたフラットなファイルシステムに過ぎない。雑誌を拾い読みするのと同じで,特定の情報を探し出すこととは違う」と話しているが,この言葉の説得力はいまだに衰えていない。土俵が変わっても,Notesの役割や価値は変わらないという確信がジスマンにあったのだ。

 CEOを辞めてIBMソフトウェアグループに移ってからもLotusphereには顔を見せてきたジスマン氏だが,昨年はついに彼のスピーチはなく,多くの顧客やパートナーをがっかりさせた。

「昨年のLotusphereでは話をしなかったが……」と切り出したジスマン氏は,現在,IBMソフトウェアグループでエマージングテクノロジーを担当する副社長を務めている。

「1994年,CEOをしていたソフトスイッチという小さな会社がロータスに買収され,1995年にはさらにIBMに買われた」(ジスマン氏)

 ジスマン氏は,「スケールメリットを追求し,企業は拡大・成長を求めていくが,逆に組織の間を調整するコストが高くついてくる。わずか60人という小さな会社では,同じメッセージと同じボディランゲージを共有できたが,大企業病を患って活力を失った会社は恐竜のように滅びてしまう」と,自身のキャリアをダブらせながら話した。

 そのうえで,ジスマン氏は大きな組織でも活力を失わないためのカギは,情報の伝達や共有のスピードだとし,IBMがどのようにロータスのソフトウェア技術を活用し,小さな会社と変わらず,同じメッセージを共有しているかを紹介した。

 IBMでは,ロータスのソフトウェアによって「w3」と呼ばれる社員向けのエンタープライズポータルを構築し,E2E(従業員対従業員)やE2B(従業員対企業)といったERM(Employee Relationship Management)の導入に取り組んでいるという。

「1月中旬,CFOのジョン・ジョイスが2001年の業績をアナリストらに報告したが,w3で全く同じメッセージを社員が受け取ることができた」(ジスマン氏)

 また,「BluePages」と呼ばれるディレクトリには5万人に上るIBM社員のプロファイルが収められている。専門分野はもちろん,社内におけるポジショニングやレポート先も知ることができ,ドラッグ&ドロップでSametimeのリストに追加すれば,すぐにリアルタイムのコラボレーションが始められるようになっている。

 ロータスソフトウェア部門でソリューションを担当するスコット・クーパー副社長は,インスタントメッセージングやe-ミーティングのSametimeによって,IBMは1回の会議当たりのコストを600ドルから6ドルへと劇的に節約できたと話す。その総額は社内会議で2100万ドル,社外との会議でも300万ドルに上るという。

 さらにクーパー氏は,「素晴らしいのはコスト削減ばかりではない。これまでよりさらに多くの社員にアクセスできるようになった」と,導入の効果を強調する。

 ロータスのe-ラーニング製品であるLearningSpace 5.0も社員教育のために幅広くIBMで導入されている。「IBM Global Campus」と呼ばれるポータルが開設されており,直接的に5500万ドル,間接的には3300万ドルのトレーニングコストが節約できている。さらに要する時間は25%短縮,コンテントは5倍に増えたという。

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▼ロータスソフトウェア

[浅井英二 ,ITmedia]