自分がいる場所をオフィスに変える,シスコがCMO戦略を発表

【国内記事】2002.2.05

 シスコシステムズは2月5日,「Cisco Mobile Office(CMO)」戦略を発表した。

 といっても,この発表で新製品が登場したわけではない。今回の発表は,同社の既存の製品群をベースに,新しいワークスタイルを実現しようというコンセプトを表明したものだ。

 同社がCMOで描くのは,オフィスのみならず,通勤途中の駅やカフェなどのホットスポット,あるいは主張先や客先,さらには自宅でも,オフィスと同様の環境で,シームレスに作業が行えるような世界の実現だ。言うなれば,働くための場所に移動して回る従来のやり方に代わり,今自分がいる場所をオフィスに変えてしまおうという試みである。

 シスコはこれまでもたびたび,プレゼンテーションや講演の中でこうしたワークスタイルを提唱してきたが,それを改めてCMOという形で示した。

 シスコは今後,このCMO戦略に沿って,普及が進むブロードバンド接続環境に同社の製品群を組み合わせ,提供していく。これまではネットワークの基幹をなすルータのほか,IPSec準拠のVPN製品「Cisco VPN3000シリーズ」や802.11b標準準拠の無線LAN製品「Aironet」ファミリ,それにLRE(VDSL)製品などが個別に発表,提供されてきた。今後はこれらの製品を,CMO戦略に沿って統合的に,エンドツーエンドで提供していくという。

IPSec VPNでセキュリティを確保

 CMOの中でもポイントとなるのが,セキュリティの確保である。どこからでもオフィスにアクセスし,必要なアプリケーションが利用できる環境は便利なものだろうが,同時に不正アクセスを防ぐための対策も欠かせない。

 そのためCMOの枠組みでは,IPSecによってVPNゲートウェイ/クライアント間の通信を暗号化して情報漏洩の可能性を低くする。同時にユーザー認証を用いて,権限を持たないアクセスを排除するようにもしている。

 もちろん,VPNもユーザー認証もずいぶん前から存在する技術だ。だが,「これまでの日本におけるセキュリティ対策は,ゲートウェイ部分におけるファイアウォール導入が中心であり,エンドツーエンドのセキュリティにまではなかなか目が向かなかった」と,同社マーケティングとうかつ インターネットスイッチング&アクセスソリューション本部プロダクトマネージャの横川典子氏は指摘する。

 そこで,CMOの実現とVPN導入を推進するため,VPN機器の設置や導入,運用作業を効率化するためのツールを,徐々に提供していく計画だ。

 ネットワークインフラの上で何が実現されるか,つまりどんなアプリケーションが使えるのかも重要だ。これに対しCMOでは,電子メールやWebだけにとどまらず,SFAやCRM,e-ラーニングといった業務アプリケーションに耐えられるインフラを提供する。将来的にはVoIPやストレージも視野に入れているということだ。同時に,ミッションクリティカルなアプリケーションの運用,検証に向けて,複数のパートナーとの話し合いを進める方針である。

 ブロードバンドとくれば,とかく家庭におけるインターネット利用環境の改善に注目が集まりがちだ。だがシスコは今回発表したCMO戦略によって,オフィスやワークスタイルにおけるブロードバンドの活用を目指すという。

 とはいうものの,課題はむしろ,技術以外の部分に潜んでいるかもしれない。旧来の日本企業における働き方に対する考え方,いわば企業文化が変化しなければ,CMOというコンセプトは受け入れ難いものだろう。

 なお同社は,CMOに基づいた一連の製品群を,明日より幕張メッセで開催される「NET&COM」のデモで披露する予定だ。

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[高橋睦美 ,ITmedia]