Interview:「JRockit」でIAサーバをエンタープライズに持ち上げるBEA

【海外記事】2002.2.25

米BEAシステムズは2月25日,カリフォルニア州サンディエゴで開催されている「BEA eWorld 2002」カンファレンスにおいて,アピール・バーチャルマシンを買収することを発表した。同社は,IAサーバに最適化されたJVM製品「JRockit」を提供するスウェーデンのソフトウェア企業。買収に至った経緯やWebLogic製品郡に与える今後の影響について,BEAのJavaランタイム製品グループ副社長兼ゼネラルマネジャー,ボブ・グリスウォルド氏に話を聞いた。

日本留学の経験もあるグリスウォルド氏。日本語も少々…

ZDNet アピール・バーチャルマシンを買収するに至った経緯を教えてください。

グリスウォルド 現在,サンから提供されているJVMは,Solaris上で最適化されており,WebLogic Serverは,Solaris用のJVMに最適化されています。もちろんサンは,インテルアーキテクチャ(IA)サーバ用のJVMも提供していますが,それはチューニングされていません。

 そのため,われわれの顧客の多くは,システムの開発についてはIAサーバ上で行っていますが,実際のシステムとして稼動する場合には構築したアプリケーションをSolarisやhp-uxなどに実装しなおすことがほとんどです。絶対にIAサーバで本番稼動できないと言うわけではありません。IAサーバ上でシステムを稼動している顧客はたくさんいますが,システムのチューニングは非常に困難です。

 過去にマイクロソフトは,非常に優れたIAサーバ用のJVMを提供していましたが,サンとの裁判の末に提供できなくなってしまいました。そのために,IAサーバ用に最適化されたJVMは,長い間市場から消えることになったのです。しかし,Itaniumの登場やIAサーバ用のさまざまな高可用性ソリューションなどの登場により,今後ますますIAサーバをエンタープライズシステムで稼動させることを目指す顧客が増えてくると思われます。

 そこでBEAでは,IAサーバに最適化されたJVM製品が必要だと考えました。そして見つけたのがアピール・バーチャルマシンのJRockitだったのです。

ZDNet なぜ,今の時期にJVM製品を手に入れようと考えたのですか。

グリスウォルド 1〜2年前では,IAサーバによるエンタープライズシステムの構築というニーズが少なかったからです。現在では,例えばHPがPA-RISCから撤退し,hp-uxをItanium上に移植する計画を発表しています。このように,ようやくエンタープライズ向け市場のニーズがIAサーバに向き始めたことが大きな要因です。

ZDNet JRockitをWebLogicに最適化することで,どの程度のパフォーマンスの向上が期待できますか。

グリスウォルド まだ,買収を発表したばかりなので,実際にどれくらいのパフォーマンスが向上できるかという具体的な数値データは持っていません。ただ,パフォーマンスも確かに重要ですが,拡張性や信頼性が向上できる点も非常に重要になってきます。

ZDNet 拡張性や信頼性が向上できるというのは,具体的にはどういう点なのでしょう。

グリスウォルド JVMは,元々はクライアントように設計されていました。クライアント用のJVMと,サーバ用のJVMでは必要とする機能におおきな違いがあるのです。クライアント用のJVMでは,1CPU当たり1ユーザーでの利用になりますが,サーバ用では複数のCPUを複数のユーザーが利用することになります。

 JRockitは,サーバ用のJVMとして設計されているので,複数のスレッドを共有できるようになっていますし,分散ガベージコレクションなども搭載されています。分散機能が組み込まれていることで,拡張性や可用性にも優れているのです。

ZDNet 今後,JRockitは独立した製品として提供されるのか,WebLogic Serverに組み込まれてしまうのか,どちらでしょう。

グリスウォルド 製品プランは,まだ明らかにできる段階ではありません。

ZDNet この買収により,サンとの関係に悪影響を与えませんか。

グリスウォルド サンとBEAの関係は非常に友好的なものです。現在,BEAは,サンのサーバ上で利用されるソフトウェアを提供するISVとしては2番目に大きい存在です。WebLogic ServerをIAサーバに最適化するということは,サンにとっては迷惑な話かもしれませんが,IAサーバ上で.Netではなく,Javaの利用が拡大すると言う意味ではサンにとってもメリットは大きいでしょう。

関連リンク

▼BEAシステムズ

▼アピール・バーチャルマシンズ

[聞き手:山下竜大 ,ITmedia]