SAPジャパン,第3世代CRMで40社以上の受注に自信

【国内記事】2002.2.28

 2月28日,IBMフォーラム 2002のパートナーセッションで,SAPジャパンのCRMビジネスディベロップメントディレクター,三村真宗氏が,アプリケーション連携により実現する顧客指向のエンタープライズシステムについて講演した。

 SAPソリューションの総称「mySAP.com」では,R/3を中核として,SCM,PLM(製品ライフサイクル管理),社内向けのポータル,パートナー企業向けのSRM,そして顧客向けのCRMなど,あらゆるSAP製品を有機的に連携させるビジョンがうたわれている。

 この日の講演で三村氏は,デモを巧みに使ってアプリケーション連携をアピールした。

 数通りのシナリオがデモされた今回の講演では,SAPソリューションの顧客窓口となるCRMが,リアルタイムに蓄積するデータをmySAP PLMソリューションを構成するモジュールや,会計システム,人事管理システムに引き渡すことで,効率的な全社・グループ統合システムを可能にすることが紹介された。

 SAP初の日本語版CRM製品「SAP CRM 2.0C」は,R/3 SD(販売管理)のアドオンモジュールとして提供されていた。これに対して,SAP CRM 3.0は,完全な独立コンポーネントとして機能する。三村氏は,異種システムとの連携が可能になる3.0を「顧客指向のエンタープライズシステムを実現する第3世代製品」と位置付ける。

 SAP CRMが持つ連携のビジョンは明確だ。しかし一方で「CRM市場における伝統」を考えた場合,その提供する機能の深さや幅広さに一抹の不安は残る。

 しかし三村氏は,継続的に機能を強化することを約束する。

「R/3 Enterpriseの登場で,ERP部分で大きなアップデートを縮小する方向にある。そこで,開発リソースをそのほかのソリューションへと振り向けるので,SAP CRMは,かなりのスピードで機能向上していくはずだ」(同氏)

 開発リソースが,CRMだけに投入されるわけではないが,連携するSAPソリューションも機能向上する。そのため,mySAP CRMソリューションとしての魅力が増すことになる。

 中でも三村氏が期待するのは,データウェアハウスモジュールであるSAP BWに実装されつつある分析機能の向上だ。かつてOLAP機能だけを搭載していたBWは,CRM向けにアラート機能を提供できる簡易な分析機能を実装したという。

 実行系のCRM製品は,リアルタイムのアラート機能を搭載するための分析コンポーネントが必要になるが(バッチ処理によるアラートなら,簡易な追加開発でも可能),単体で見ると実行系のSAP CRMにとって,BWの分析機能強化が役に立っている。

 ごく小さなことだが,アプリケーション連携が生きた例だろう。

 また三村氏は,「われわれのCRM製品は,SFA部分だけを見ても“支援志向”の製品になっている。“管理志向”の製品ではないから,営業マンは使ってくれる」と,シーベルを牽制し,「技術面でも大きな進化を遂げている」という。

 技術面では,特に,モーバイル分野における進歩が大きい。iモード/PDAからのリモートデータアップデート,クライアントPCとデータ同期し,納期情報や価格を顧客に提示するための機能などが新たに加わったほか,PDA上に小さなデータをダウンロードしておき,日報の入力など簡易な報告に利用する機能が近く日の目を見る予定という。

 SAPジャパンは,40社以上の顧客獲得を2002年におけるSAP CRMの目標としていた。講演終了後,三村氏に話を聞くと,「現在,80社近くの案件を抱えている。40社は実現可能な数字だ。正月明けで企業の動きがまだ鈍い第1四半期でも,5件くらいがまとまりそう」という。

 SAP CRM 3.0は,2001年10月に出荷を開始したばかりだが,現在,既に13社が採用を決めている。

関連リンク

▼日本アイ・ビー・エム

▼SAPジャパン

[井津元由比古 ,ITmedia]