CaseStudy:BEAのインフラを選んだユナイテッド航空の挑戦

【国内記事】2002.3.06

 ユナイテッド航空は,BEAシステムズが2月24日〜27日までの4日間,カリフォルニア州サンディエゴで開催した「BEA eWorld 2002」カンファレンスにおいて,BEAのアプリケーションインフラストラクチャを活用した同社のIT化戦略について紹介した。

 同社は,世界26カ国と2属領の129都市に運航している世界最大級の航空会社の1社だ。1日に約1650便を運行し,約22万7189人の乗客を世界各地に送り届けている。2000年度の送客数は,およそ8400万人という。

 会社創設後75年の歴史を持つユナイテッド航空が,常に乗客を安全に目的地に送り届け,パートナー制度である「ユナイテッド・エキスプレス」や「スターアライアンス」のコードシェアー便を安全に運行するためには,IT技術は不可欠なものになっている。

UALロイヤルティサービスのCTO,ロバート・ロブレス氏

 ユナイテッド航空の関連会社であるUALロイヤルティサービスのCTO(技術最高責任者),ロバート・ロブレス氏は,「75年の歴史を持つ会社のビジネスを支援するITシステムだからといって,ただ古いわけではない」と笑う。しかし,同社の既存システムは,特定の機能ごとに構築されており,新しいシステムに適応させすることが困難なくらい十分に古いのも事実という。

 さらに,「自分たちでさえ適応させることが困難なシステムを利用して,ホテルやレンタカー会社,エンターテイメントアウトレットなどのパートナーと情報を交換することは“挑戦”以外の何者でもない」と同氏。

 この挑戦を現実のものとし,統合化されたサービスを実現するためにユナイテッド航空では,JavaやXMLなどの標準技術を利用して,パートナー情報や企業取引を統合し,顧客が必要とする最適な情報をリアルタイムに提供できるWebサービスを実現することを決定し,BEAのアプリケーションインフラを採用した。

 ユナイテッド航空では現在,自動チェックインシステムの「E-TICKET」やニュース,マイレージプラス,フライトスケジュール,予約などの情報が24時間いつでも引き出せる「United.Com」によるセルフサービスキオスク,空港と飛行機のネットワークアクセスおよびモーバイル向けの旅行情報など,同社が目指すゴールの幾つかを実現している。

 このE-TICKETのシステムは,利用者にとって便利なだけでなく,同社にとっても年間約2500万ドル以上のコスト削減を実現しているという。ユナイテッド航空では,こうした既存のシステムを効果的に統合し,Webサービスを実現することで,より魅力的なサービスを顧客に提供するとともに,同社にとっても大きなビジネスにつなげていきたいと考えているようだ。

 例えば同社が目指すのは,非接触型のICカードを利用することで,搭乗者はチェックインからセキュリティチェック,そして搭乗確認までを,それぞれのポイントでセンサーが検知し,自動化する仕組みを実現するという。これにより,空港の混雑は解消され,セキュリティ面も向上できることになる。また,搭乗機内には無線LANネットワークを構築することで,フライト中でもインターネットアクセスが可能な環境も実現。顧客サービスも向上できるとしている。

 ロブレス氏は,このような同社が目指すゴールをビデオにより紹介した。

「2000年以降,IT技術を活用した情報サービス革命は確実にやってくるだろう。われわれの顧客が航空券を購入し,サービスを受ける方法はどんどん変化している。Webサービスを実現することで,現在のような空港の混雑もなくなり,高い安全性とセキュリティも実現されるだろう」(ロブレス氏)

 情報やサービスが必要な顧客や従業員が,いつでもどこからでも情報を取得できる仕組みを実現するためには,レガシーシステムやC/Sシステムなどの既存のシステムを統合することが必要だ。また,データや情報をアクセスできる権限の設定やセキュリティの確保も必要になる。

 ロブレス氏は,アーキテクチャーベースのアプローチであるBEAのアプリケーションインフラを採用することで,脆弱なシステムの相互連携環境の安定性を保証することができるとしている。またBEAは,標準ベース技術を採用していることから,将来の拡張性も約束される。

「BEAのアプリケーションインフラを利用することで,“一度,構築すると,いかなる場所へも展開できる”(Build once, Deploy for anywhere)仕組みを迅速に実現できることを期待している」(ロブレス氏)

Case File

企業名:ユナイテッド航空

所在地:イリノイ州シカゴ

業務内容:航空業務全般

ニーズ:空港の混雑を緩和し,高い安全性,セキュリティを提供することにより,顧客に最高のサービスを提供する。

ソリューション:BEAのアプリケーションインフラやJava,XMLなどの標準技術を採用することで,既存のシステムを効果的に統合できる企業システム用のプラットフォームを実現する。

今後の展開:BEAのインフラをベースに,Webサービスを実現することで,搭乗手続きの自動化やフライ途中の情報提供,ホテルレンタカー会社などのパートナーサービスの柔軟な統合インフラを実現する。

関連リンク

▼ユナイテッド航空

▼BEAシステムズ

[山下竜大 ,ITmedia]