迅速な意思決定が生き残りのカギ,データマート統合を促すNCR

【国内記事】2002.3.07

 3月7日,日本NCRの「Teradata Universe Tokyo 2002」が開幕した。初日午前,会場となったホテルでは,テラデータ部門のCOOを務めるマーク・ハード氏が記者会見を行い,「日本企業は,米国企業の失敗に学ぶべきだ」と話し,正確な情報が得られず,しかもコストが高くつくデータマートを止め,1つの全社的なデータウェアハウスを構築するよう促した。

 Teradataは,データウェアハウスの構築を前提にデザインされたデータベース。並列処理に優れ,データウェアハウス構築では他の追従を許さないエンジンだ。NCRでは,全社的な意思決定のための基盤として売り込んでおり,フォーチュン500の企業の25%がTeradataを使ってデータウェアハウスを構築しているという。2001年,テラデータ部門の売り上げは,景気低迷の中でも3%増やし,13億ドルに達した。

1980年にNCRに入社したベテラン。現在はNCRのプレジデントも兼務している

 来日したハードCOOは,最近の企業を取り巻く環境が劇的に変化しており,特により多くの意思決定を瞬時に迫られるビジネスの現状を紹介した。

「今や1時間に3億件のボイスメールが残され,また同数の電子メールが発信されている。ビジネスの現場ではストレスの多い意思決定を瞬時に処理しなければならない」(ハード氏)

 ハード氏は特に競争の激しい通信,航空の例を挙げた。

 米国の移動体通信の会社では,1日当たり1万8500人もの顧客が解約しているという。その多くは,電話で解約を申し入れており,その間,約2分以内に「その顧客を引き止めるべきか」「どう引き止めるべきか」を正確な情報を基に判断しなければならない。

 また,米国の空港では,遅延やキャンセルによって,別のフライトのゲートカウンターに顧客が殺到する光景をよく見かける。その際にも航空会社のゲート担当者は,残り少ない座席をどの顧客に割り振るべきかを瞬時に判断することが求められる。

 ハード氏は,こうした意思決定のためには,全社的な単一のデータウェアハウス構築が不可欠だという。ERPやSCMといったバックオフィスからの情報を格納したデータマートと,CRMなどのフロントオフィスから生まれたデータマートを別々の「サイロ」のように構築していたのでは,瞬時に正しい情報が得られないばかりか,その運用のために高いコストを支払わなければならないと指摘する。

 ある業界アナリストは,データマートを維持する平均年間コストは200万ドルと算出している。NCRの調査によると,大企業の31%が11から100を超えるデータマートを稼動させているという。

「しかも,データマートプロジェクトの7割は失敗に終わり,CEOらの不満が募っている」(ハード氏)

 NCRでは,大規模なデータウェアハウスの構築では「2〜3年先を行く」とアナリストらが評価するTeradataのスケーラビリティを生かし,データマートの統合を進めるのが当面の狙いだ。

「今こそ,日本の企業は米国企業の失敗から学ぶべきだ」(ハード氏)

[浅井英二 ,ITmedia]