Linux Column:「Webインターフェースの限界を知る -iOfficeの場合-」

【国内記事】 2002.3.26

 3月も押し迫ってくると年度末ということでニュースらしいニュースがなく,コラムも書くネタに困ってしまう。そこで,今回は最近の筆者の会社のLinux利用の状況などをネタにしてみようと思う。小企業のLinux導入記と思って笑って読んでもらえれば幸いだ。

 筆者のモットーとして,「技術者は,自分の目で見て,自分で感じたことしか信じるな」というのがある。まぁ,そうはいってもなかなか技術の第一線で自分でなんでもかんでもやっているほどの時間はないのが実情ではあるが,それでもこの気持ちは忘れたくない。

 昨年発表された「Linux白書」の統計では,Linuxを採用している企業の内,約10%がグループウェア用のプラットホームとしてLinuxを利用しているという。ご多分に漏れず,わが社びぎねっともLinuxを積極的に採用する企業であるし,徐々に人が増えてきたのでスケジュールを共有するためにその10%の企業にならってグループウェアを導入することにした。導入したのは,ネオジャパンの「iOfficeV3」だ。幸い,60日間無料で試用ができるので,とりあえずは試用版を導入してみた。

 筆者は,スケジュール管理にIBMの「WorkPad」とWindowsの「PalmDesktop」を組み合わせて行っている。今までいくつかのスケジューラーを使ってきたが,PalmDesktopが最もユーザーインタフェースが優れていると思っている。データの同期を取るHotSyncも簡単で使いやすい。こういう,何も考えないで済むインターフェースが筆者は大好きだ。

 この環境をiOfficeに組み込むべく,iOffice for Palm-Syncを導入した。モジュールは無償で提供されており,サーバとクライアントの両方に導入する。仕組みとしては,サーバ側はHTTPで情報をやり取りするためのCGIプログラムで,クライアント側にはPalmDesktopを使う。

 ここで筆者は勘違いをした。てっきりPalmDesktopが持っているスケジュールなどの情報をサーバに送信するのだと思っていたのだ。しかし,何度試してみてもPalmDesktopとiOfficeのスケジュールが同期が取れない。よくよく調べてみるとなんのことはない,PalmDesktopは単なるミドルウェアとして働き,WorkPadとiOfficeがダイレクトに同期しているのだ。

 提供元のネオジャパンとしては,クライアント側でのスケジュール管理はWebブラウザでiOfficeの画面を使えばいいのだから,こういう仕組みにしたのだろう。しかし残念ながら,どんなに工夫をしたところでWebのHTMLのインターフェースはネイティブなGUIのインターフェースにはかないっこない。時間の指定1つとってみても,30分単位という制限はあるもののGUIならマウス1つで操作できるのに対して,Webでは何回も何回も選択とクリックをしないといけない。

 同じくPalmのインターフェースも,快適さの点ではGUIにはかないっこない。狭い画面と,入力方法の問題だ。つまりこのシステムは,インタフェース的に最も優れている部分を使用不可能にしてしまう仕組みの上に成り立っていることになる。これでは魅力は半減というか,最悪の場合,導入不可能ということになる。

 Linuxはそれ自体,インターフェースを持たない。なぜならカーネルだからだ。そこでコマンドラインシェルがあったり,X Windowがあったり,場合によってはWebインターフェースでLinuxを操作をすることになる。

 コマンドラインは,はっきり言って熟練者以外には難解極まりないものだし,X Windowは正直使いにくい(それでもだいぶ改善されてきてはいるようだが……)。Webもブラウジングしているだけならばいいが,一歩操作系に踏み込めばCUI(キャラクタユーザーインタフェース)の世界に逆戻りで,それほど凝ったことはできない。Javaという選択肢もあるだろうが……。

 Webグループウェアは,一頃に比べればインタフェースも洗練されて使いやすくなったものの,悲しいかな,筆者のようにやたらと予定を入れまくらないといけない人間には,操作がまだまだ冗長でかったるくて使えない,というのが実情のようだ。

 Linuxが最近盛り上がっていないのも,1つにはこのようなインタフェースの問題から活躍の場所が狭められている可能性もあるのではないかなと,感じずにはいられない。少し長期的な視点で,Linuxとユーザーインタフェースについては考えていきたいと思う。

[宮原 徹びぎねっと]