Sun ONE,そして次の「N-1」を語るサンのCTO

【海外記事】2002.3.30

 先週,カリフォルニア州サンフランシスコで「JavaOne 2002 San Francisco」が行われた。一時,ネットバブルを背景にマーケティング色が強まった同カンファレンスだが,サン・マイクロシステムズのソフトウェアシステムズグループ執行副社長,パット・スルツ氏が「原点に戻る」と話したとおり,今年はデベロッパーにフォーカスした内容となった。

 Javaは,Java Community Process(JCP)を通じ,仕様をオープンなプロセスで策定・公開することで,その拡張が絶えず図られている。JCPのルールでは,仕様が新たに作成されるとリファレンスとなるインプリメンテーションも提供される。

 こうしたコミュニティーモデルとライセンスモデルを背景に,Javaのデベロッパーコミュニティーは今や300万人に膨れ上がった。JCPでは現在,200件近いJSR(Java Specification Request:Java仕様に対する要求)が約500社の参加を得て討議されている。

 Javaの成功はますます確かなものになっているが,一方ではサンがJavaやソフトウェアに対する投資をどうやって収益につなげていくかが依然として見えてこないという指摘がある。数年前,スコット・マクニーリ会長兼CEOが,「ソフトウェアはタダになる」と発言したこともあり,さらに分かりにくくしている。

 しかし,サンではWebサービス構想である「Sun ONE」(Sun Open Net Environment)を掲げ,Javaとソフトウェアを同社のビジネスのセンターステージに送り出そうとしている。JavaOneの会期中,モスコーニセンターでサンのCTO(最高技術責任者)を務めるグレッグ・パパドプラス氏がプレスブリーフィングを行い,Sun ONEや,その次に控えている「N-1」構想について説明してくれた。

MITで客員教授も務めるパパドプラスCTO。ブリーフィングはまるで講義に参加しているようだ

開発者のためのSun ONE,管理者のためのN-1

 パパドプラス氏は,ほかの多くの業界人と同様,Webサービスを分散コンピューティングの自然の進化と考えている。コンピュータによるインターネットは,コンピュータが組み込まれたデバイスのそれへと拡大し,さらには地球上のすべてのものがつながる世界が予想されている。アプリケーションのモデルも変化を余儀なくされ,クライアント/サーバからWebアプリケーション,そして「Webサービス」へと進化するわけだ。

「WebサービスとJava/XMLは親和性が良く,さらにシングルサインオンで使い勝手を良くするにはアイデンティティ機能を提供するProject Libertyが重要になってくる」(パパドプラス氏)

 アプリケーションのモデルがWebサービスへと進化する中,サンはデベロッパーのコミュニティーは,マイクロソフトの.NetとSun ONEに収れんされていると主張する。

「かつてデベロッパーは,SolarisやWindowsといったOSのAPIを利用してアプリケーションを書いていたが,これからはWebサーバ,アプリケーションサーバ,ディレクトリサーバ,ワークフローといったミドルウェア上で開発するようになる。つまり,デベロッパーをOSからミドルウェアのレベルに引き上げるのがSun ONEだ」とパパドプラス氏。

 サンのインプリメンテーション,つまり製品としてはiPlanetがあるが,標準インタフェースを採用しているため,例えば,BEA WebLogic Serverを組み込んでシステムを構築することもできる。インプリメンテーションを1社から購入する以外に選択肢がない.Netとの違いはここにある。

 ただ,ネットワーク,ストレージ,そしてサーバなどソフトウェアの背後には無数のハードウェアも存在する。アプリケーションの分散化が進めば,サーバの数も必然的に増すことになる。

 そこで現在,サンが水面下で開発を進めているのが,システム管理者に対して複雑なシステムを単純化して見せる「N-1」の構想だ。デベロッパーに対するSun ONEの「システム管理者版」といったところだ。パパドプラス氏は,正式な名称ではないとしながらも,「Network-1の略だ」と話す。

 既にデータセンターの領域では,ストレージの仮想化とネットワーク(例えばIPアドレス)の仮想化が進んでいる。あとは演算処理の仮想化だが,パパドプラス氏は,1970年代にIBMが実現した分割による仮想化というアイデアではなく,その全く逆だとする。

「Jiniなども利用し,複数のコンピュータを束ね,ストレージ,ネットワークの仮想化と一緒に,1台の大きなコンピュータをつくる。あとはシステム管理者は,WebサービスのSLA(Service Level Agreement)に応じてリソースを割り振ればいい」(パパドプラス氏)

 N-1は,OSの領域だとパパドプラス氏は話す。

「これまではずっとSolarisで単体のハードウェアを念頭に置いてきたが,これは次の分散OSだ。とてもエキサイティングしている」(パパドプラス氏)

[浅井英二 ,ITmedia]