特別フロアで無線LANをどうぞ〜リーガロイヤルホテルが4月下旬より
| 【国内記事】 | 2002.4.03 |
大阪のリーガロイヤルホテル大阪は4月下旬より，特別客室フロア「ザ・プレジデンシャル・タワー」の改装オープンに合わせて無線LANシステムを導入し，宿泊客が自由に利用できるようにする。
802.11b標準に準拠した無線LANを利用してインターネットへのアクセスを提供する，いわゆる“ホットスポット”は，今年ブレイクが予想されるサービスの1つだ。既にファーストフード店舗や駅，あるいはカレー屋など，さまざまな場所で，実用サービスやそれに向けた実験が展開されている。
もちろんホテルも，有力なホットスポット候補だ。たとえばNTT西日本では昨年10月より今年1月にかけて，駅や飲食店のほか，ホテル阪急インターナショナルや新阪急ホテルなどと協力して，ホットスポットの実証実験を行ってきた。またモバイルインターネットサービス（MIS)の「Genuine」の場合も，サービスエリアには複数のホテルが含まれている。
これに対しリーガロイヤルホテル大阪のケースでは，ホテル自身がサービスの一環として無線LANアクセスを提供する。特別客室の2フロアならばどこにいても，また特別のチャージが課されることなく利用でき，無線LANカードやドライバソフトも無償で貸し出される。したがってホットスポットの一種ではあるが，むしろホテルによる「付加価値サービス」という意味合いが強い。
決め手は「セキュリティ」
リーガロイヤルホテルは2000年3月に，HomePNAを導入して客室を1Mbpsで結び，宿泊者向けにインターネット接続システムを提供してきた。今回の無線LAN導入はこうした接続環境をさらに拡張するもので，ザ・プレデンシャル・タワーの23階，24階の2フロアで利用できる。これに伴いインターネットへのアクセス回線も，従来のOCNエコノミー（128Kbsp）から，Bフレッツ（100Mbps）に切り替えた。
無線LAN機器にはシスコシステムズの「Cisco Aironet 350シリーズ」を採用した。決め手となったのはブランドと「セキュリティ」だという。
無線LANは便利なシステムだが，既にたびたび報道されているとおり，セキュリティ対策の必要性も指摘されている。ESS-IDの設定，端末MACアドレスの登録，WEPによる暗号化といった手はあるが，WEPについてはセキュリティ上の弱点が指摘されており，ビジネスで利用するにはまだ不十分という声も多い。
そこで今回は，シスコシステムズの独自技術である「PSPF」（Publicly Secure Packet Forwarding）を利用することとした。これは，同一のアクセスポイントを利用している端末間の通信を防ぐ技術で，アドホックモードを禁止するものと考えればいいだろう。しかもPSPFは，アクセスポイントの設定のみで実現できるため，他社製の無線LANカードでも利用できる。これにESS-IDやMACアドレス登録，またLEAP（802.1x）を通じたユーザー認証を組み合わせることで，ビジネス客にも満足の行くセキュリティが実現できるという。
システムの設計，構築を担当したのはNTT西日本で，既存システムとの接続，アクセスポイントの設置場所などを検証した。実際に，無線LANクライアントを持って「フロアを歩き回り，すみずみまでカバーでき，しかもアクセスポイント本体が客の目に付かないような設置場所を決めた」（NTT西日本法人営業本部の中井卓氏）という。
ただ，客室を結ぶHomePNAの速度は最大で1Mbps。「最初に有線のネットワーク接続システムを導入した2年前には，まだADSL，VDSLともに安定して利用できる状態ではなかった」（中井氏）という事情があったからだが，今後この部分がボトルネックになることは目に見えている。そこでリーガロイヤルホテル大阪では，まず無線LANを導入したフロアから，VDSL（LRE）を導入することを検討しているという。
さらに同ホテルでは，無線LANの利用エリアを拡大するとともに，ホテルスタッフ業務にも活用する予定だ。その際にはもちろん，顧客のトラフィックとスタッフのトラフィックを区別し，またVPNを併用していっそうセキュリティを高める計画という。
一方，機器を提供する側のシスコシステムズでは，無線LANを利用したホットスポットにVPNを組み合わせ，ユーザーがどこにいようと社内と同じように作業を行える新しいワーキングスタイル，「Ciscoモバイル オフィス」を提唱している。
同社アライアンス＆テクノロジー本部，プログラムマネージャを務める斎藤真紀子氏は，こうした構想も踏まえてか，「米国におけるホットスポットサービスの事例を見ると，ホテルの場合は延泊したり，リピーター率が高まったりと，目に見えて投資効果が高い」とし，ホテルにおけるホットスポットの展開に期待を見せている。
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[高橋睦美 ，ITmedia]
