「経営と顧客情報をリアルタイムに把握するオラクルのE-Business Suite」

【海外記事】 2002.4.05

 悲劇的な同時多発テロから7カ月が過ぎ,依然として多くのITベンダーが売り上げの落ち込みと赤字から抜け出せないでいるが,米国経済にも薄明かりが射してきた。企業はその競争力を支えるITへの投資を以前にも増して重要視しており,コストを削減したり,ビジネス機会を最大限に生かすべく,ERP,CRM,SCMの導入に熱心だ。

 そんな中,米国時間の4月7日(日)からカリフォルニア州サンディエゴで「Oracle AppsWorld 2002 San Diego」が開幕する。1994年に日本で,そして1996年には米国でも行われるようになったOracle OpenWorld(OOW)がOracleデータベースの祭典だとすれば,こちらは「Oracle E-Business Suite」(Oracle EBS)と呼ばれるオラクルのアプリケーション製品に関する年次カンファレンスだ。

 ちなみに,Oracle AppsWorld(OAW)は昨年2月,ルイジアナ州ニューオリンズでスタートしたばかりの日の浅いカンファレンスだが,実際にはOAUG(Oracle Applications Users' Group)の年次総会を継承したものだ。Oracle EBSを事業の柱として確立したレイ・レイン社長兼COOが2000年夏に同社を去ったこともあってか,昨年のニューオリンズでは「総帥のラリー・エリソン会長兼CEOがアプリケーション事業にいよいよ本腰を入れ始めた」との声も聞かれた。

 サンディエゴに場所を移した今回のOAWでは,今年1月にアムステルダムで行われた欧州版OAWの流れを受け,Oracle9iを基盤とするOracle EBS 11iの強みや,その熟成度がアピールされそうだ。

「エンタープライズアプリケーションは,われわれが先鞭をつけたスイートの戦いとなっている」と話すのは日本オラクルでEビジネス本部のディレクターを務める内田雅彦氏。

 ERP,CRM,SCMへと領域を拡大し,スイート化を進めてきたオラクルだが,ライバルたちが追いついた今,さらにそのコンセプトを新たなものにしている。

 ラリー・エリソンCEOが打ち出したメッセージは,「Information Architecture」「Complete Automation」という極めてシンプルなもの。可用性とスケーラビリティに優れたOracle9iを基盤とし,シングルデータモデルを構築,その上にさまざまな業務プロセスをプラグインできるアーキテクチャをそう表現したのだ。

 また,内田氏は,「1年半前にリリースされたOracle EBS 11iは,当初バグの問題が指摘されたが,それらも概ね解決され,熟成の段階に入っている」と話す。

 昨年,粗鋼の生産量で世界トップに立った韓国の浦項総合製鉄(ポスコ)は11iを導入し,早くも年間1.2億ドルのコスト削減を実現しており,同社では,今後10年間で36億ドルの新たなコーポレートバリューを生むことが期待できるとしている。

 オラクル自身も10億ドルのコスト削減プロジェクトを実施している最中で,直近の第3会計四半期の利益率は35%まで高まっている。そして,それを支えているのは,Complete Automationによるビジネスプロセスのオートメーション化であり,いつでも最新の経営情報が引き出せるInformation Architectureである。

 今年1月のアムステルダムでは,「Daily Business Close」という,まるで会計用語のようなキーワードが飛び出したが,つまりは時々刻々と変化する経営状況や顧客に関する最新の情報が手に取るように分かる次世代のエンタープライズシステムをオラクルがメッセージとして強烈に打ち出したものだ。

 経営や顧客の情報が手に取るように分かる「Daily Business Close」こそ,激動の21世紀を勝ち抜くカギに違いない。

[ITmedia]