11i Upgrade Forumでアウトソーシングを売り込むオラクル

【海外記事】 2002.4.07

 オラクルは4月7日,カリフォルニア州サンディエゴで明日開幕する「Oracle AppsWorld 2002」(OAW 2002)を前に,Oracle E-Business Suite 11i(Oracle EBS 11i)へのアップグレードを検討中の旧バージョンのユーザー向けの「11i Upgrade Forum」を開催した。

 同フォーラムは,初日のキーノートスピーカーを務めるアプリケーション開発担当執行副社長,ロン・ホール氏が登場するなど,小規模だが力が入れられている。来場者は,サンディエゴに到着し,OAW参加登録を終えたばかりの約250人ほどが集まった。ユーザーからの関心も高かったようだ。

 というのも,このフォーラムが,Oracle EBS 11iに「安く,早く,効果的」にアップグレードするための手法を紹介するうたわれていたためだろう。旧バージョン(主にバージョン10.7)を使い続けているユーザーには,11iへの移行を望みながらも,スタッフの不足やコスト面から,ステータスが「検討中」となっている企業が少なくない。

 このような企業のIT担当者が集まった同フォーラムだが,11iと旧バージョンの機能比較や容易な移行プロセスは脇役に追いやられ,オラクルが先ごろサービスを開始すると正式発表したアウトソーシングが話題の中心をさらった。

 Oracle EBSのマーケティングを担当するリサ・アーサー副社長の挨拶に続いて,アウトソーシング担当のジョセフ・キング副社長が登場したことからも,オラクルへの忠誠度が高く,アップグレードに関心を持つユーザーに対して,アウトソーシングを売り込みたいという同社の思惑が感じられる。

ジョセフ・キング氏

 キング氏は,11iには触れず,アウトソーシングが効果的であり,企業のコスト削減を可能にすることについて講演した。

 オラクルでは,アップグレード保証(保守契約)を年間ライセンス料金の22%としている。しかし,パッチ当て作業など,日々の運用はユーザーが自ら行っているため,マイナーアップグレードが遅れたり,パッチを当てないまま運用を継続したりするケースが発生している。

 同社のアウトソーシングを利用すれば,システム運用をすべてオラクルに任せることができる。企業側から見ると,ITスタッフが不足していても,確実なシステム運用が可能になるほか,ITスタッフやハードウェア設置場所を削減することで,システム運用にかかるコストの削減を期待できる。

 オラクルは24時間×365日のサポートも提供する。また,パッチがリリースされるとすぐにシステムに反映してくれることも,ユーザーにとってはありがたいサービスになるだろう。

「このサービスにより,われわれは,(パッケージアプリケーションやデータベース,アプリケーションサーバという「製品」の枠を越えた)“完全なるベンダー”へと飛躍できる」(キング氏)

 価格は,1カ月当たりライセンス料金の5%。ホステッドサービスを利用せず,企業が用意したデータセンターでハードウェアを管理し,オラクルが遠隔地からVPNを通してそれにアクセスすることでサービス提供する場合は3%となる。なお,保守契約費用は,別途支払う必要がある。

 オラクルでは,既に非公式にサービスを提供している企業があることを発表していた。「なぜ安くて高品質なサービスを提供できるのか? それは,われわれが開発者であり,かつ管理者になるからだ」というキング氏は,年間61万1000ドルの保守費用がかかっていた企業が,アウトソーシングを利用して,それを18万4000ドルまで削減した事例も明らかにした。

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[井津元由比古 ,ITmedia]