アウトソーシングビジネスで他社製アプリ駆逐を狙うオラクル

【海外記事】 2002.4.07

4月7日,明日開幕する「Oracle AppsWorld 2002」に先立って開催された「11i Upgrade Forum」にオラクルのアプリケーション開発担当執行副社長,ロン・ウォール氏が登場した。後半,聴衆からの質問に答える形で進められたこの講演では,関心の高いユーザー企業の問いかけに対し,同氏がどう答えるかに注目が集まった。

 講演の冒頭でウォール氏は,「Oracle E-Business Suite 11iは,ノンカスタマイズで導入できるパッケージであり,アプリケーションのホーリーグレイル(イエス・キリストが最後の晩餐で使った聖杯)だ」というメッセージを伝えた。

ロン・ウォール氏

 会場に集まったユーザーの多くが稼動させているであろう11i以前のアプリケーションは,データベースレベルで統合されていた製品ではなかった。各モジュールがそれぞれのインスタンスを持ち,格納されたデータをやり取りする。これは,ライバルと同様でのアーキテクチャで,データベースを「連携」させただけだった。

 こうしたアーキテクチャでは,扱うデータ量が膨大になり,トランザクションが増加すると,システムとして対応できなくなってしまう危険性がある。つまり,いわゆる「インスタンスの壁」が発生してしまうのだ。

 それを完全になくし,シングルインスタンスであらゆるアプリケーションを稼動させることで,インスタンスの壁を打破し,統合された1つのデータベースを巨大なデータウェアハウスとして機能させられることが,11iの優位性に繋がる。そして,これによってオラクルは「統合」のメッセージを自信を持ってアピールできるようになったのだ。

 同氏は,このようにグローバルなシステムをシングルインスタンスで管理できるという技術的優越性だけでなく,その機能やオープンなアーキテクチャ,そしてOracle9i Database/Application Serverと組み合わせて最適なシステムを構築することのメリットを説き,アップグレードしてほしいと呼びかけた。

 ただし,ノンカスタマイズとは言うものの,ビジネスプロセスは企業ごとに異なるし,独自のビジネスプロセスを強みとして定着させている企業も多い。同氏は,「11iはオープンかつ柔軟。企業のニーズに合わせる部分は,(カスタマイズでなく)エクステンションとして提供できる」と話す。

 この日の主要なテーマとなったアウトソーシングサービスを利用する企業に対しても,エクステンション部分とパッケージとが整合性を取って稼動するように,サポートしてくれるという。

 一方,他のアプリケーションを連携させている場合も多い。会場からの,「オラクルをERPで利用しており,人事にピープルソフト,CRMにシーベル・システムズのアプリを利用している場合はサポートしてくれるのか」という質問に対して同氏は,独特の静かな口調ながら,はっきりとこう答えた。

「まずはERP部分のアウトソースを受ける。そして,人事,CRMへとステップバイステップでわれわれのサービス範囲を拡大していく」(同氏)

 アウトソーシングサービスを受けることにより,企業が持つ非オラクルのアプリケーションの駆逐を加速し,サポートを含めてオラクル一色に染めるという決意表明である。

 事実,データベースからアプリケーションまでのシステムを,すべてオラクル製品で構築させていない企業にとって,このサービスで得られるコスト削減効果は限定的だ。新たな収益源という側面よりも,アプリケーションビジネス拡大のための布石という見方をした方が,オラクルがこのサービスを立ち上げた思惑をより明快に理解できるのかもしれない。

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[井津元由比古 ,ITmedia]